077 新リース会計の使用権モデルへの懸念
以前に、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が公表した「リース」の公開草案の「使用権モデル」についてお伝えした。これを受け、日本でも「リース」会計基準の改訂が検討されており、企業会計審議会(ASBJ)は「リース会計に関する論点の整理」についてコメントを募集した。その中でも借手側の使用権モデルによる会計処理について多くのコメントが寄せられている。
使用権モデルでは、オペレーティング・リース取引を含む、すべてのリース取引を、リース期間におけるリース資産の使用権取得取引と捉える。これによれば、オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引の区分の恣意性を排除することができる。しかし、リース契約には様々な形態が存在し、サービス的性質の強弱、契約期間の長短などの違いがある。そのため、使用権モデルによる会計処理を行った場合、それぞれのリース取引の経済的実態を的確に反映しないという批判がある。また、それまで認識対象とされていなかったオペレーティング・リース取引を認識する必要があるため、当該コストが、財務諸表利用者が享受するベネフィットを超えるおそれがある。
現時点で、企業会計基準委員会はコメントの検討を行っているが、今後の改訂状況に注目する必要がある。