123 整理解雇について
企業の事業再生を図る場合、遊休化している資産を売却したり、不要な支出を抑えるなどして、経営資源を有効活用するための措置を講じることになるが、リストラ策の中でも重要なものの一つが「整理解雇」である。
整理解雇では、円滑な事業再生という経済政策や企業の方針と、経済的弱者である労働者を保護する労働法規定が衝突する。
もっとも、解雇により常に労働者が不利益を被るわけではなく、一部の労働者を解雇することで、他の多くの労働者の雇用が守られるような場合には、解雇にも積極的な理由が認められる。
このため、整理解雇は、厳格な要件の下では認められるべきものである。
整理解雇についてよく言われるのは、4要件を満たす必要がある、というものである。
これは、法令の規定に基づくものではなく、判例により形成されたもので、①解雇の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の妥当性、がその内容である。
4要件と言われることが多いため、4つの条件の全てを満たす必要があるという印象を受けがちであるが、実は必ずしも全てを満たす必要はない。4点は満たすものではなく考慮すべきものであるということで、専門書では「4要素」という表現もされている。
また、整理解雇法理による保護は、現に雇用されている労働者にのみ及ぶものではない。
例えば、採用内定が出された段階の、労働契約締結前の者も保護の対象となりうる。労働契約締結前であっても、現に雇用されている労働者同様、経済的弱者として労働法により保護されるべき立場にあるためである。
なお、整理解雇は、労使間の訴訟に発展し、損害賠償が生じる可能性もあるため、会計・監査上は、偶発債務や引当金の検討が必要になる可能性もある。