平成22年8月27日、監査基準委員会より『監査ツール-監査計
画-』(中間報告)」(公開草案)が公表された。
国際会計士連盟の国際監査・保証基準審議会が進めているクラ
リティ・プロジェクトに対応するために監査基準委員会報告書の新設
及び改正の作業を行っており、監査基準委員会報告書をベースにし
た監査ツールが必要であるという判断から、ツールの作成・公表に
至っている。
早ければ平成23年4月以降開始事業年度の監査より適用される
ことから、現状の監査手続・ツールとの相違などの検討・対応が求
められる。
平成21年12月4日、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が公表された。本会計基準の適用後は、会計方針の変更を行った際は、他の会計基準に特段の定めがない限り、過去の期間のすべてに遡及適用することになる。また、過去の誤謬の訂正が発見された場合も比較情報として表示される過去の財務諸表は修正再表示されることになる。
本会計基準は、平成23年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び誤謬の訂正から適用する。また、本会計基準の公表に伴い、関連する他の会計基準も順次改正される予定である。
従来、益金の額に算入されていた外国子会社からの配当等が、
21年度税制改正によって、益金不算入となった。これに伴い、タック
スヘイブン税制も改正された。日本の親会社において、配当等の額
は特定外国子会社等の配当の有無に関わらず、合算されることに
なる。合算の対象とされた配当等の額から日本の親会社に配当が
なされた場合には、原則として当該配当等は益金不算入となる。こ
の場合、益金不算入なる金額は、配当等の額の「95%」ではなく、
配当等の額の「全額」である点に注意が必要である。
同族会社は少数の者によって支配されており、非同族会社と比べて、租税回避が行われやすい。例としては、関連会社に対する低額販売や子会社に対する無利息貸付が挙げられる。これに対して、法人税法132条では不当に租税回避を行うような行為又は計算に関しては否認できるとしている。しかし、どの程度が租税回避となるのかは規定が存在せず、税務署長の判断によるところが大きいと思われる。
したがって、判断が主観的なため、大規模な節税策を予定しているような場合、租税回避とみなされ、同族会社の行為計算の否認の規定を受けてしまう可能性があることに留意すべきである。
金融庁は7月30日に「第9回公認会計士制度に関する懇談会」を
開催した。公表資料では「公認会計士制度に関する懇談会中間報
告書(案)」が示され、この中で会計プロフェッション資格の創設がう
たわれている。
新資格名称は「財務会計士(仮称)」である。今後細部の調整等
を経て正式に決定されることとなるが、位置付けは旧試験制度の会
計士補に近い。なお、監査証明業務は従来どおり公認会計士の独
占業務である。
改正の検討は試験合格者の就職浪人、企業内会計士、会計士業
務のグローバル化等の様々な考慮事項がある中でなされてきた。
時代を反映した改正としては、試験科目にITと英語が新たに加わる
見込みである点が興味深い。
平成22年7月30日、企業会計基準委員会は非上場会社の会計
基準に関する懇談会の検討結果(概要)を公表した。日本の会計基
準の国際化を進めるにあたって、非上場会社への影響を極力抑え
るなどの意見を踏まえて、非上場会社の会計基準を幅広く検討す
ることが主な趣旨となっている。
その検討結果として、非上場会社を次のように分類したうえで会
計基準や指針を適用していくことになる。
①金融商品取引法の対象となる非上場会社…従来通り上場会社
と同様の会計基準を適用
②金融商品取引法適用会社以外の会社法上の大会社…上場会
社の会計基準を基礎に、一定の会計処理及び開示の簡略化を検討
③会社法上の大会社以外の会社…一定の区分を設け、その区分
に該当するものは中小指針とは別に新たな会計指針を作成
非上場会社では一般的に上場会社に比べて利害関係者が少ない
と予想され、会計基準の適用のためのコストがベネフィットを上回る
という状況になりかねない。そのような状況を回避するために企業規
模や状況に見合った会計基準や指針の設定が行われることで、中
小・非上場企業の経営者が難しい会計基準ばかりに集中するので
はなく企業経営に集中することができ、ひいては経済発展に寄与し
ていくのではないかと考える。
東京証券取引所は、平成22年6月29日に「『四半期決算に係る
適時開示の見直し、IFRS任意適用を踏まえた上場制度の整備等
について』に基づく有価証券上場規程等の一部改正について」の公
表を行った。
この改正では、①四半期決算等に係る適時開示の見直し、②コ
ーポレートガバナンス向上に向けた環境整備、③国際会計基準
(IFRS)任意適用会社への対応の観点から、有価証券上場規程等
の改訂が行われたものである。
新規上場に関する審査の対応や、上場廃止基準等にも改正があ
るため、留意が必要である。
平成22年度税制改正では、タックスヘイブン税制について、軽課税率の基準となる税率が25%から20%に引き下げられた。例えば中国では、法人税率が税制改正後のトリガー税率を上回るため、当該税制の対象から外れることとなる。また、従来、保有割合が5%未満の場合が適用対象外であったが、この保有割合が10%に引き上げられ、対象外の範囲が広くなった。これに伴い、中国等への海外投資が積極的になることが予想される。当該改正は、外国子会社の平成22年4月1日以後開始事業年度より適用される。
販売奨励金はメーカー側から小売業者に対して支払った金銭であ
り、得意先に支払うものであり、基本的には損金算入される。しかし、
販売奨励金として支出したとしても、得意先の赤字を補填する目的
ならば、「寄付金」に該当し、得意先を観劇や旅行に招待する目的
ならば「交際費」に該当する。したがって、その実態によって性質が
異なる。また、販売奨励金を支出した目的が明確でない場合、交
際費として認定され、追徴課税された事例が存在するため、留意
すべきである。
ASBJは6月30日に「包括利益の表示に関する会計基準」を公表した。当初は3月中の予定とされていたもので、3ヶ月遅れの公表となった。
これにより、従来、評価・換算差額として純資産直入されていた評価差額が利益として表示される。平成23年3 月31 日以後終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用。
しかし、全ての財務諸表に適用されるものではなく、個別財務諸表や非公開会社の財務諸表のような、利害関係者のニーズが上場会社とは異なるものに対しての取り扱いは未確定であることに留意が必要である。