平成22年6月30日、企業会計基準委員会は改正企業会計基準
第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」、改正企業会計
基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の
適用指針」及び改正実務対応報告第9号「1株当たり当期純利益
に関する実務上の取扱い」を公表した。
これは、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に
関する会計基準」の適用に伴って改正が行われたものである。
改正のポイント
・会計方針の変更又は過去の誤謬の訂正により財務諸表に遡及
適用又は修正再表示が行われた場合は、1株当たり純利益の遡及
適用後又は修正再表示後の金額により算定する。
・当期に株式併合又は株式分割等が行われた場合、表示する財
務諸表のうち、最も古い期間の期首に、当該株式併合又は株式分
割が行われたと仮定して1株当たり純利益の金額を算定する。
また当会計基準及びその適用指針の改正以外にも、「会計上の
変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用により改正が行わ
れる会計基準があるので注意されたい。
東京証券取引所は、「四半期決算短信にかかる適時開示実務の取扱い」及び「四半期決算短信様式・作成要領」の全面改訂を行い、平成22年6月1日に改訂された「四半期決算短信様式・作成要領」を公表した。主な見直しのポイントは以下のとおりである。
まず、開示時期について、30日以内の開示が望ましいものとしていたが、投資者ニーズに応じた開示時期に開示を行えるよう、開示時期の目安基準を取り下げた。(遅くとも四半期報告書の提出までには、四半期決算短信の開示を行う必要がある。)
また、四半期短信の開示内容について、これまですべての上場会社に一律に、同様の開示内容を開示するよう求めていたが、今回の全面改訂では、一律同様の開示内容は最小限にとどめ、それ以外は、上場会社が投資者ニーズを踏まえて開示する水準を選択できるようになった。さらに、開示する基本財務諸表も要約表示が可能となっている。これは、従来の四半期短信の開示内容が、四半期報告書とほぼ同様の開示内容を求めていたため、投資者のニーズに対応して、柔軟・迅速な開示が行えるようにしたものである。
この改訂により、四半期短信の開示時期及び開示内容はこれまでより柔軟化されたことになる。
子会社が不正行為等を行った場合、罰科金が課せられ、当該費用は損金不算入となる。一方、親会社が子会社の罰科金を肩代わりして支払った場合、当該費用は寄付金として取り扱われ、限度額を超えた部分は損金不算入となる。しかし、罰科金が子会社にとって大きな負担となり、当該負担を回避するため、親会社が負担した罰科金は寄付金に該当しない可能性があるなどケースによって取扱いが異なる。
また、孫会社が存在するなど、親子関係が多岐に渡る場合には注意し、どのケースに該当するか検討する必要がある。
ASBJの企業結合プロジェクト(ステップ2)の結論が見えてきた。
第202回企業会計基準委員会(平成22年5月28日開催)では、次
のような方向性が示されている。
現行基準からの変更が予定されているのは、次のようなものである。
・少数株主持分の名称が「非支配持分」へ変更
・全部のれん方式の選択適用が可能に(現在は購入のれん方式
のみ。全部のれん方式では、非支配持分に係るのれんも認識)
・条件付対価の認識(現在は認識しない)
・取得関連費の費用処理(現在は取得原価へ含む)
・暫定的な会計処理の修正は遡及修正へ(現在は修正した期の
損益処理)
なお、偶発負債及び企業結合に係る特定勘定については、結論
が持ち越されている。
今後は、年内に公開草案と改訂基準の公表が予定されている。
日本では改訂基準が今年4月に適用されたばかりであるが、再度
大幅に改訂されることがほぼ確実である。
早めの対応策としてはIFRSの理解であろう。企業結合基準に限
らず、大幅な変更が見込まれる基準については、先にIFRSを学ん
だほうが日本基準の改訂への対応も早く、効率的ではないだろうか。
平成22年5月21日に企業会計審議会の内部統制部会が開催され、
経団連や企業などから寄せられた要望や意見をもとに、内部統制報
告制度の見直しが検討された。
見直し検討が行われた主な内容(案)は以下の通りである。
①中堅・中小上場企業の場合に対する簡素化・明確化
②制度導入2年目以降可能となる簡素化・明確化
③その他の明確化(「重要な欠陥」の判断指標の事例追加など)
④「重要な欠陥」の用語の見直し
これらの内容の見直し検討が行われたのは、企業にかかるコスト負
担を考慮して行われるものと考えられる。なお、これらは内部統制監
査の対応にも影響が生じるため、監査人が受け入れられる程度など
も含めて慎重な対応が望まれるところである。
平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から、
セグメント情報等の開示に関する会計基準(企業会計基準第17号)
(以下、本会計基準)及びセグメント情報等の開示に関する会計基
準の適用指針(企業会計基準適用指針第20号)が適用される。
本会計基準の改正の主たる目的は、国際的な会計基準で採用
されている「マネジメント・アプローチ」の導入である。「マネジメント・
アプローチ」とは、経営者が経営上の意思決定を行い、また、業績
を評価するために、経営者が企業の構成単位に関する情報を基礎
とする方法である。
本会計基準の適用に伴い、企業は、セグメント情報の区分方法
や測定方法などの見直しを行う必要がある。
なお、従来開示が求められていた「事業の種類別セグメント情報」、
「所在地別セグメント情報」及び「海外売上高」について、本会計基
準では、関連情報として一定の情報開示が求められている。そのた
め、本会計基準の適用後も、セグメント区分の方法や測定方法が
異ならない場合は、従来と同様の方法により開示されることが考え
られる。従って、従来のセグメント情報と本会計基準に基づくセグ
メント情報の違いは、経営者の実際の意思決定や業績評価に使
用されている情報に基づくか否かという違いである(本会計基準第
51項)と言える。
日本と香港の間で租税協定の基本合意に至った旨、平成22年3月31日に財務省が公表した。これまで中国との租税条約は存在したものの、香港との租税協定はなかった。そのため、現在香港へ投資・進出している企業だけではなく、投資・進出予定の企業にとっても朗報である。
当該租税協定によるメリットは、(1)課税当局間の情報交換が可能であること、(2)下表の通り、投資所得に対する課税税率の軽減である。今後は、両政府内による署名、承認手続きのプロセスを経た上で発効される。当該租税協定により、日本企業は、中国だけでなく香港も魅力的な市場と考え、より一層投資先・進出先として注目を浴びるのではないかと思われる。
投資所得 |
区分 |
課税税率 |
配当 |
親子間(持株割合10%以上) |
5% |
その他 |
10% |
利子 |
政府等 |
免税 |
その他 |
10% |
使用料 |
― |
5% |
平成22年4月30日、日本公認会計士協会は監査基準委員会報
告書の新起草方針の概要(平成22年2月26日公表)に基づき、以
下6本の監査基準委員会報告書の改正版(公開草案)を公表した。
なお意見募集期限は平成22年5月31日までとなっている。
・分析的手続
・内部統制の不備に関するコミュニケーション
・財務諸表監査における総括的な目的
・監査役等とのコミュニケーション
・経営者確認書
・確認
新起草方針に基づく監査基準委員会報告書の改正版は合計37
本が予定され、今回の公表で20本の改正版(公開草案)の公表に
至っている。ちなみに37本も改正される理由は、2009年3月に完
了した国際会計士連盟の国際監査・保証基準審議会が行うクラリ
ティ・プロジェクトで公表された37本の国際監査基準と国際品質管
理基準に合わせるためと考えられる。
これらの改正は会計の国際化(国際財務報告基準の導入)だけ
でなく、監査の分野においても国際化が求められているという表れ
であろう。
また、監査基準委員会報告書の改正版の適用時期は平成23年
4月1日以後開始の事業年度に係る監査より適用される予定となっ
ており、監査法人をはじめとする会計監査人には適時・早急な対応
が求められることになる。
グループ法人税制改正(平成22年度)について、3月19日に当ホームページに記載した。本日は、当該税制改正により、中小法人の軽減税率の特例の不適用が与える影響について考えたい。
現行の税制では、資本金1億円以下の中小法人であれば、税務上の課税所得が800万円以下であれば、18%の軽減税率を適用する事が可能であった。
しかし、平成22年度税制改正では、中小法人であっても、資本金5億円以上の親会社の完全子会社であれば、中小特例の適用ができなくなる。
したがって、資本金5億円以上の親会社の完全子会社である中小法人が、軽減税率18%を採用して法定実効税率を算定している場合には、繰延税金への影響が生じるため留意が必要である。当該税制改正は、平成22年4月1日以後に開始する事業年度より適用される。
金融庁は4月23日、「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を公
表した。この中では、IFRSについて適切な理解を促すため、次の
ような誤解事例に対しての解説が行われている。
(誤解)上場会社には、直ちにIFRSが適用されるので、大至急準
備をしなければならない。
(実際)2010年3月期から、一定の要件を満たす上場企業の連結
財務諸表について、IFRSを任意に適用できるようになったもの。
(誤解)IFRSを導入すると、土地など固定資産も含めて全面的に
公正価値(時価)で評価しなければならない。
(実際)IFRSにおいて、公正価値(時価)で評価しなければならな
い範囲は、現行の日本基準と大きくは異ならない。
実務家向けというよりは、広く一般に周知するための情報提供と見
受けられ、既にIFRS導入に向けて学習されている方々にとっては
目新しい内容は無いかも知れないが、一般的にどのような誤解が
生じているかを知る意味では一読の価値があると思われる。