平成22年3月1日以後に終了する事業年度に係る定時株主総会終了の日の翌日までに、上場会社は、「独立役員」を1名以上確保することが求められます。
独立役員とは、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役をいいます。
会社法では、すでに社外監査役及び社外取締役の制度が設けられています。しかしながら、グループ内や取引先から、相互に社外役員として派遣し合うなど、必ずしも会社と中立の立場ではない者が社外役員に就任している現状が多数あります。こうした経営者保護ともいえる状況に対応するため、独立役員を明示的に確保し、社外役員の外形的な独立性を確保することが図られています。
一般株主と利益相反が生じるおそれのない独立役員が、企業経営に参加することで、一般株主を配慮した意思決定が行われるようにすることが期待されています。
「外国子会社配当益金不算入制度」について、平成22年3月30日に当ホームページに掲載した。当該制度が、法人事業税の計算における外国源泉税等の損金算入の可否に影響を与えている。当該制度では、外国子会社から受ける配当の5%を益金に算入する。したがって、外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等においても、その5%が法人事業税計算上、損金算入されても実際はおかしくはない。しかし、法人税法上、当該外国源泉税等は損金不算入としている。そのため、外国子会社からの受取配当金の5%が益金算入されたとしても、法人事業税計算上、当該外国源泉税等は損金不算入となるため注意が必要である。
平成22年4月1日から資産除去債務会計基準が適用され、会計上、資産除去債務が割引現在価値で負債計上される。しかし、税務上は債務確定主義であるため、利息費用は損金不算入となる。したがって、当該会計基準の適用にあたり、税務上においては、別表上の加算と税効果の取扱いに留意する必要がある。また、税務上も会計に近づくための税制改正が必要なのではないかと思う。
ASBJ(企業会計基準委員会)の公表しているプロジェクト計画表が4月12日に更新された。会計基準コンバージェンスの加速化を反映し、従来は年1回の更新であったが、今後は随時更新していくこととされている。
本年中に公表予定の基準等は企業結合、無形資産、財務諸表の表示(包括利益)、公正価値、退職給付、1株当たり利益の6つ。来年以降に継続するプロジェクト数は、新たに追加された排出権を含めて15。未了の論点はまだ多い。
今後も会計基準や開示情報は難化が予想されるが、公認会計士試験合格者の一般企業への就職が進まない現状において、個人投資家や関係者への周知がうまく図られていくのか気になるところである。
平成22年3月17日、企業会計基準委員会は実務対応報告第26号「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」を、適用期限であった平成22年3月31日で廃止することを決定した。
一昨秋における金融市場の混乱を背景に、国際会計基準審議会が「金融資産の保有目的区分の変更」を公表したことに伴い、日本においても債券の保有目的区分の変更に関して当面の取扱いが示されていたが、当実務対応報告第26号の適用事例が少数に留まっており、最近の経済環境下においては必要性が乏しいことなどを理由に最終的に廃止が決定されたようである。
また、保有目的区分の変更を行った場合には、その後の事業年度以降も残高が存する限り当該変更に関する追加情報の注記が求められていたが、適用期間満了後はこの注記は求められなくなった。
上記当面の取扱いの廃止により、従前通り売買目的有価証券に分類した債券を満期保有目的債券へ変更することは認められなくなるなどの影響が生じるため留意されたい。
平成20年11月28日に、企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第23号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」が公表されており、原則として、平成22年3月31日以後終了する事業年度から適用される。
本会計基準制定の趣旨は、賃貸等不動産の扱いについて、国際会計基準IFRSとのコンバージェンスを図ることを目的としている。本会計基準において、賃貸等不動産は、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産とされており、貸借対照表計上額を従来と同様の原価ベースで評価する一方、時価情報の注記を求めている。
賃貸等不動産の範囲としては、自らの事業運営のために所有しているホテルなどは、賃貸等不動産には該当しないが、遊休不動産や時間貸しの駐車場などは、賃貸等不動産に該当するとされている。
なお、注記する時価については、観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額で注記することも認められている。
平成21年度税制改正により、外国子会社から受ける配当の95%を益金不算入にする制度が創設された。当該制度が適用されるかどうかの主な留意点は次の通りである。
(1)外国子会社より配当を受ける親会社の事業年度が、平成21年4月1日以後開始される事業年度であるか。
(2)配当の決議日が平成21年4月1日以後であるか。
税務上、法人税基本通達2-1-27によると、外国子会社における配当決議日に、親会社は配当として収益計上する。この場合、平成21年4月1日に配当の支払いを受けたとしても、配当決議日が平成21年3月31日以前であれば、当該制度は適用できない。
また、法人税基本通達2-1-28では、配当支払日による収益計上を容認しているため、当該制度を適用する際には、受取配当金の計上方法にも留意し、配当決議日をきちんと確認した上で、当該制度の適用の可否を検討しなければならない。
現在、グループ法人税制の整備が行われている。その1つとして、「中小特例」の扱いが挙げられる。現行、軽減税率等5項目に該当する中小特例を適用する条件は、資本金が1億円以下の中小法人である。平成22年の税制改正により、資本金1億円以下の中小法人であっても、資本金5億円以上の親会社の完全子会社であれば、中小特例を適用する事ができなくなる。したがって中小特例を適用しているケースで、親子間の支配関係が存在する場合は、留意する必要がある。
監査基準改訂へ向け、金融庁(企業会計審議会)から公開草案が公表されている(H22/3/5公表、3/19まで)。国際監査基準との整合を図り、監査報告書内容の明瞭性を改善する趣旨である。
改訂基準は、平成24年3月期決算に係る監査から適用される見込み。
現行の①導入区分②概要区分③意見区分のうち、②概要区分が「経営者の責任」と「監査人の責任」へ明確に分類され、また追記情報についても記載内容の変更がある。
上記の変更は被監査会社及び監査人の作業の増加にはつながらないと考えられるが、併せて公表された“会計基準の遡及適用等”に関する内容については実務担当者の作業に影響があり、今後も動向に注目する必要がある。