政府は11月29日、「会社法の一部を改正する法律案」と「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。
コーポレートガバナンス(企業統治)を強化するため、新たな機関設計として導入される「監査等委員会設置会社」の制度や、親会社の株主が子会社の経営陣の責任を追及できる「多重代表訴訟」の制度の創設が柱となる。
なお、上場企業への社外取締役の設置義務付けが以前より焦点となっていたが、経済界の反発を受けて見送られている。ただし、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって有価証券報告書の提出が義務付けられている会社で社外取締役を選任しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、定時株主総会にて説明しなければならないとした。
また、社外取締役や社外監査役の要件も、親会社や兄弟会社の業務執行者、当該会社の業務執行者の近親者が該当しないよう厳格化する。
さらに、改正法案附則にて、施行の2年後に、社外取締役の義務付けをあらためて再検討すると、将来的には義務化の検討がされることを明記している。
金融庁は、11月13日に行われた企業会計審議会監査部会にて、特別目的の財務諸表監査を対象として「準拠性に関する意見」の表明が可能との規定を監査基準に明文化する方向で議論を行った。
近年、投資事業有限責任組合監査やファンド監査等、特定の利用者のニーズを満たすべく特別の利用目的に適合した財務諸表に対しても、監査という形で信頼性の担保を求めたいとの要望が高まってきている。
一般目的の財務諸表監査の場合、会計基準への準拠性に加え経営者が採用した会計方針の選択や適用方法、財務諸表全体としての表示が適正表示を担保しているかといった実質的な判断を含めた意見(適正性に関する意見)が求められる。
一方、特別目的の財務諸表監査の場合、一般目的の財務諸表監査と異なり、保証範囲等が異なることから、適正性に関する意見は馴染まない事も多く、当該特定目的の財務諸表に関する会計基準に準拠して作成されているかどうかについての意見(準拠性に関する意見)を表明することがより適切と考えられる事から、今回の議論に至った。
監査基準が改訂されれば、平成26年4月1日以降に発行する監査報告書から適用される予定である。
金融庁は、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令等を10月28日付で公布、施行した。
これまでIFRSを適用するためには、
①上場会社である
②有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに関わる記載を行っている
③IFRSに関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、当該基準に基づいて連結財務諸表を作成することができる体制を整えている
④国際的な財務活動・事業活動を行っている(外国に資本金が20億円以上の連結子会社を有しているなど)
の上記の要件をすべて満たすこととされていたが、今回の改正で①と④の要件が撤廃された。
現在、IFRS適用会社は、任意適用会社数16社、任意適用予定会社5社(東証公表 平成25年9月時点)となっているが、本改正により、さらに拡大いくことが予想される。
秋の与党税制改正大綱(民間投資活性化等のための税制改正大綱)が政府与党責任者会議で承認され、「中小企業の少額減価償却資産特例」の延長が盛り込まれた。
「中小企業の少額減価償却資産特例」とは、中小企業者等が取得価額30万円未満の減価償却資産を、平成15年4月1日から平成26年3月31日までの間に取得し、事業に供した場合、一定の要件の下で、取得価額を一時に損金算入できる特例である。
従来は平成26年3月31日までの取得が対象であったが、与党税制改正大綱では2年延長し、平成28年3月31日までの適用が明記されている。
また、中小企業投資促進のための拡充案も判明しており、特定機械装置等が生産性向上設備等に該当する場合、即時償却や7%税額控除が可能となる。
その他にも、中小企業者等に限定した措置が設けられており、民間企業での積極的な制度の活用が期待されている。
自民党HP
https://www.jimin.jp/activity/news/122441.html
企業会計基準委員会は、9月13日、以下の企業会計基準及びその適用指針(以下「本会計基準等」という。)の改正を公表した。
・「企業結合に関する会計基準」
・「連結財務諸表に関する会計基準」
・「事業分離等に関する会計基準」
・「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」
・「株主資本等変動計算書に関する会計基準」
・「包括利益の表示に関する会計基準」
・「1株当たり当期純利益に関する会計基準」
・「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」
・「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」
・「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」
・「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」
この改正は、国際会計基準とのコンバージェンスの一環として進められたものであり、この改正によって、支配喪失時の会計処理以外について、ほぼ国際会計基準と同等の内容になる。
本改正は、平成27年4月1日以後開始事業年度から適用するものとされている。
なお、主な改正点は、以下のとおり。
1.当期純利益の表示
「少数株主損益調整前当期純利益」→「当期純利益」
「当期純利益」→「親会社株主に帰属する当期純利益」
「少数株主持分」→「非支配株主持分」
2.支配が継続する子会社持分の増減処理
支配が継続する子会社持分の追加取得又は一部売却等を、これまでの損益処理から資本取引とする。
つまり、追加取得の際に生じる差額について、のれんとする処理をやめ、資本剰余金とする。
また、一部売却の際に生じる差額について、売却損益とする処理をやめ、資本剰余金とする。
3.取得関連費用の取扱い
企業結合に関する取得関連費用について、これまでの取得原価に含める処理を改め、発生時に費用処理する方法に改める。
金融庁は、平成25年9月6日に平成24年度有価証券報告書のレビュー実施結果を公表した。
無形固定資産(のれん含む)や投資有価証券(ファンド含む)の評価の他、関連当事者取引(役員に対する貸付を含む)が「重点テーマ」として審査されたが、一部の会社で、のれんの計上・減損損失等に関する不明瞭な記載や、関連当事者取引に関する記載漏れ等、適切な開示がなされていない事例があったようである。
関連当事者取引では役員に対する貸付も審査対象になったようであるが、当該取引の概要のほか、貸付がある場合の回収可能性の判断方法及びその根拠など、少し踏み込んだ質問が行われたようである。
金融庁は関連当事者との取引の開示に関しては、関連当事者の範囲を網羅的に把握し、取引の内容等の必要な事項を正確に記載する必要がある点を留意点として挙げている。
東京証券取引所は「有価証券上場規定等の一部改正」を行い、2013年8月7日に公表した。
当該規則は2013年8月9日から施行される。
今回の改正は、
①虚偽記載等に関わる上場廃止基準の取扱いを明確化することによって、投資家の予見可能性を向上させること
②特設注意市場銘柄制度(※)の投資家への注意喚起機能を適切に発揮させること
等を目的としている。
主な改正点は以下の通りである。
①虚偽表示又は不適正意見等に起因する上場廃止基準の取り扱いの明確化
(1)上場会社が有価証券報告書の虚偽記載を行った場合等の一定の要件を満たし、かつ、「直ちに上場廃止としなければ上場の秩序を維持することが困難であることが明らかなとき」に上場廃止とすることを明確化
(2)上記の基準に該当しない場合であっても、一定の場合は上場廃止になることを明確化
②特設注意市場銘柄制度の見直し
(1)会社情報の適時開示等に関わる規定に違反した場合であって、内部管理体制等の改善の必要性が高いと認められる時等、特設注意市場銘柄の指定対象の拡張
(2)内部管理体制等の改善期間を、原則3年から1年へ短縮
③有価証券報告書等の提出遅延に係る上場廃止基準の見直し
上場廃止事由となる、提出期間の延長の期限を短縮
④上場契約違反金の額の見直し
上場契約違反金の額を、一律1,000万円から、年間上場料金に比例した金額に変更
詳細は下記の東京証券取引所のサイトをご参照ください。
特設注意市場銘柄の積極的な活用等に係る有価証券上場規程等の一部改正について(PDF)
http://www.tse.or.jp/rules/regulations/b7gje6000000myd3-att/b7gje6000003o0v4.pdf
※特設注意市場銘柄制度
有価証券報告書へ虚偽記載を行うなどして上場廃止のおそれが生じたものの上場廃止までには至らない銘柄等に当該指定を行い、注意喚起を行う制度。
以上
退職給付会計基準が改正され、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から早期適用することが可能となっている。平成25年3月期に係る有価証券報告書提出会社の中で、改正退職給付会計基準を早期適用する会社は44社に上っている。
主な変更点としては、
①未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法
②退職給付債務及び勤務費用の計算方法
③開示の拡充
④複数事業主制度の取扱いの見直し
⑤長期期待運用収益率の考え方の明確化
⑥名称等の変更
が挙げられる。
これらの内、②退職給付債務及び勤務費用の計算方法においては、適用初年度は損益に影響させず、利益剰余金に加減することが認められている。
前期末に重要性基準の枠内に収まり、割引率を変更しなかった会社が、改正基準の適用で割引率を引き下げた場合、影響額は利益剰余金から減額する。一方、前期末に割引率を引き下げた場合には、前期時点で、数理計算上の差異として損益処理される。
影響額を損益処理させたくない会社が早期適用を選択したと考えられる。
平成25年6月24日、日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」を公表した。
現状、引当金については、企業会計原則注解(注18)にその計上基準が示され、また個別の会計基準や監査上の取扱いなどはあるものの、包括的な会計基準は設定されていない。
実務では引当金の計上に関して、様々な処理がなされていることが想定されるため、平成22年10月に会計制度委員会に引当金専門委員会を設置し、有価証券報告書の開示状況の調査や主要な業種別委員会関係者からのヒアリング等を行い、引当金に関する個別論点の洗い出し、注18を基に具体的な会計処理及び開示についての考察、また国際財務報告基準(IFRSs)に照らした考察を行ったとされている。
この研究資料では、貸倒引当金や投資損失引当金などの評価性引当金を除く負債性引当金(賞与引当金、製品保証引当金、返品調整引当金、ポイント引当金、債務保証損失引当金、修繕引当金、事業撤退損失引当金、災害損失引当金等)を対象としたとされている。
また、退職給付引当金(リストラクチャリングに関連するものを除く)及び資産除去債務については対象としていないとしている。
詳細は以下の日本公認会計士協会ウェブサイトにあるので、興味のある方はぜひご覧ください。
会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」の公表について
平成25年6月12日、企業会計審議会総会・企画調整部会の会合で、わが国のこれまでのIFRS対応の議論が整理され、取りまとめが行われた。
今後、当局の報告書の取りまとめに向けた詰めの作業が行われる予定であり、IFRS対応の今後の方針は次のとおりである。
任意適用要件の緩和策として、従来、任意適用要件であった「上場」要件と「国際的な財務活動・事業活動」要件は撤廃する方向でまとめられる予定である。
IFRSの適用方法として、現行の指定国際会計基準を、IASBが作成する正式なIFRSとして残し、我が国独自の日本版IFRSを作成することとなるようだ。
また、金融商品取引法開示は連結ベースへ一本化し、単体情報の開示は、会社法開示を活用する仕組みとするなど、簡素化・効率化を図る方向でまとめられる予定である。
任意適用企業と、それ以外で、日本基準、日本版IFRS、IASBのIFRSと3つの会計基準による財務諸表が存在することとなり、財務諸表利用者側の立場では、比較可能性の点で問題が残るのではと思われる。