日本公認会計士協会(会計制度委員会)は平成24年12月10日、「税効果会計に関するQ&Aの改正について(公開草案)」を公表した。これは、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」に対応するための見直しである。
この改正(案)では、Q15が追加され、次のような考え方を示している。
・連結財務諸表における会社分類は、個別財務諸表における会社分類と変わらない。
・連結貸借対照表への未認識項目の負債認識において生じる将来一時減算差異についても、将来解消年度が長期にわたる将来減算一時差異に当てはまる。
・会社分類が変更となり、連結財務諸表上、退職給付に係る負債に係る繰延税金資産の回収可能性を見直す際には、連結損益計算書又は連結包括利益計算書で調整する。
平成25年1月9日(水)まで意見を募集している。本公開草案から大幅な変更はないと思われるが、確定版を参考にして実務に備えて頂きたい。
金融庁企業会計審議会は、12月11日に「監査における不正リスク対応基準(仮称)の設定及び監査基準の改訂について(公開草案)」を公表した。
改訂案では、
・平成26年3月期の財務諸表監査から適用
・対象は主に金融商品取引法に基づいて有価証券報告書等の開示を行っている企業
となっており、3月決算の上場企業の場合、平成25年4月から新基準による監査が実施されることが予定されている。
不正リスク対応基準案の中で、特徴的なのは、監査人の職業的懐疑心が強調されている点である。
また、不正リスク対応基準の策定の基本的考え方では以下の点が記載されており、あくまで従来の財務諸表監査の枠組内での基準改訂であることが強調されている。
・重要な虚偽表示と関係のない不正は対象としていない点
・不正摘発を意図したものでなく従来の財務諸表監査の目的の範囲内の監査である点
・リスクアプローチの範囲内で、監査の有効性を確保するものである点
・不正を原因とした重要な虚偽表示のない財務諸表を作成する責任は経営者にあるという点
企業サイドの対応としては、従来と同様に、不正リスク対応基準に示された不正リスク要因等の例示項目を参考にして、社内の状況を定期的に点検し、不備がある場合は、是正を図ることが重要と考えられる。
平成24年11月16日、企業会計審議会監査部会は、監査業務に関連する以下の4項目について議論がなされた。
(1)多様な監査業務(学校法人監査等)に応じた審査のあり方
(2)監査契約書のあり方
(3)監査報告書の記載内容
(4)公認会計士と依頼者との契約に基づいて行われる非監査業務(株価算定等)のあり方
上記のうち、「(2)監査契約書のあり方」においては、報酬の額について、予定していなかった追加的な手続等が発生した場合の、我が国の規定(監査契約書記載の監査約款に基づいて、監査人と被監査会社の双方が誠意を持って協議する)と、米国の規定(追加の監査報酬は当法人の標準単価に基づき計算され、当初の監査契約書に記載された監査報酬に加算される)についての比較から、我が国のインセンティブのねじれについて議論がなされた。
また、「(3)監査報告書の記載内容」については、強調事項等の活用の可能性や義務的記載事項の拡充の是非について議論がなされた。
同部会では、平成24年9月25日にも不正に対応した監査の基準の考え方(案)について議論されており、監査制度に関する積極的な議論がなされている。投資家をはじめとする利害関係者・被監査会社・監査人の多くの理解を得ることにより、監査制度自体の信頼を向上するため、現場にある声について、十分な広い議論がなされていくことが望まれる。
ASBJは年内にも企業会計基準の公開草案を公表する。その概要は以下のとおりである。
①連結と単体はともに、のれんの処理について、現行のまま償却処理を継続する。
②企業結合における取得関連費用については、すべて発生時の事業年度の費用として処理する。
③暫定的な会計処理の確定または見直しが企業結合年度の翌年度に行われた場合、当該暫定的な会計処理の確定または見直しの影響を企業結合年度の財務諸表に反映する。
④非支配株主持分を資本の範囲に含め、非支配株主との取引を資本取引とする。
従来、非支配株主持分は、資本の範囲に含まれておらず、非支配株主との取引も損益取引として扱われていたが、今回の公開草案の内容はIFRSの会計処理を踏まえたものとなっている。
非支配株主との取引が資本取引として扱われることで、親会社の子会社に対する持分変動による差額は資本剰余金として処理される。
以前、本ページでも紹介したとおり、法制審議会会社法制部会では「会社法制の見直しに関する要綱案」が取りまとめられた。
同部会では、ガバナンスを機能させるために様々な検討が行われたものの、完璧な答えが出たわけではなく、機関設計や機関の権限などは、今後も見直しが検討されることになるだろう。
その際、参考になるのは、海外の会社法制ではないだろうか。
今回は、最近、筆者が触れる機会があったドイツの監査役会制度を紹介したい。
ドイツの監査役会の権限として特徴的な点は、次のようなものがある。
①取締役選任権(株式法84条1項)
②取締役解任権(重大事由ある場合に限る:同84条3項)
③取締役の業務執行同意権(同111条4項)
日本では、①②は株主総会の権限である(会社法329条1項、339条1項)。ドイツの監査役会が強い監督権限を有していることがわかる。
また日本では、業務執行の責任は取締役が負うため、監査役会は③のような権限を有していない。日本の監査役は、特定の場合に、取締役の行為への差止請求権を有するに過ぎない(同385条1項)。
その他、ドイツでは共同決定制度により、監査役会メンバーとして労働者代表の監査役が選任される点も日本には見られない点である。これにより、労働者の意思が経営に反映される。
以上のドイツ監査役会制度は、経営者を監督する機能に関しては日本より強いと考えられる。
共同決定制度により経営の意思決定が遅れるとのデメリットも考えられ、そのまま日本へ導入することは難しいが、面白い例である。
金融庁は、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」を、平成24年 9 月28日に公布し、パブリックコメントの結果も併せて公表した。
この内閣府令は、オリンパス等の粉飾事件を受けて、「売上高等の小さな会社に係る高額な対価による子会社取得について、金融商品取引法上の開示が行われていなかった」との指摘から、臨時報告書の提出事由に、以下の要件を加えることとされた。
子会社の取得を決定した際に、
当該子会社取得の対価の額が提出会社の直近最終事業年度の純資産額の15%以上となる場合
連結子会社による子会社取得の対価の額が連結会社の直近最終事業年度の純資産の15%以上となる場合
つまり、下記の場合に臨時報告書の開示が必要となる。
「子会社取得の対価の額」≧直近最終事業年度の提出会社の純資産額15%
または、
連結子会社による「子会社取得の対価の額」≧直近最終事業年度の連結会社の純資産額15%
「子会社取得の対価の額」については、実質的に、一連の子会社の取得行為として判断される会社等については、その会社の取得の対価も、「子会社取得の対価の額」に合算して判断することになる。
また、「子会社取得の対価の額」には、株式(持分)の売買代金や、対価としての自己株式、子会社取得に当たって支払う手数料、報酬その他の費用等の額が含まれるので、思わぬ開示漏れとならないように、注意が必要である。
この内閣府令は、平成24年10月1日からの施行となっている。
平成24年 9 月28 日、厚生労働省は「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部」において、厚生年金基金の代行制度を一定の経過期間をおいて廃止する方針を決定した。
この制度を利用している場合には、制度の運用方針によっては会計上も影響あるので留意が必要である。
例えば、解散又は脱退する場合で、例外法(退職給付会計基準の注解12)を採用している場合には、解散又は脱退に伴う追加的な拠出があれば、その要拠出額を費用として認識することになる。
また一定の要件を満たせば、厚生年金基金解散損失引当金等の科目で処理する必要がある。
※退職給付会計基準の注解12
総合設立の厚生年金基金を採用している場合のように、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないときには、当該年金基金への要拠出額を退職給付費用として処理する。この場合においては、掛金拠出割合等により計算した年金資産の額を注記するものとする。
本年、7月1日に再生可能エネルギー特別措置法に基づく固定価格買取制度がスタートし、約3ヶ月が経過した。各種の節税メリットにより、投資が盛んなようで、太陽光発電が認定件数全体の99%を占める状況となっている。
平成24年度の太陽光発電の現状の買取価格・期間は以下のとおりである。
買取価格・期間は、年度毎に経済産業省傘下の調達価格等算定委員会の意見を聴き、見直しが行われる。
なお、一度売電がスタートした場合、買取価格・期間は当初の特定契約の内容で『固定』される仕組みになっている。
太陽光 |
10kW以上 |
10kW未満 |
10kW未満 |
(ダブル発電) |
調達価格 |
42円(40円+税) |
内税42円 |
内税34円 |
調達期間 |
20年間 |
10年間 |
10年間 |
ここで、太陽光発電設備から生じる売電収入の消費税の課税関係が気になるが、事業者による太陽光発電設備から生じる売電収入は、資産の譲渡等となり、課税売上に該当するようである。
10kW以上の場合、収入は40円で固定されるが、別途消費税がかかる計算になる。
10kW未満の場合、内税であるため、事業者に該当すると手取り収入にも影響する。
投資の際は将来的な消費税の税率変更(増税)リスクも考慮する必要があるようである。
平成24年8月23日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、企業結合ステップ2の検討を行った。
企業結合ステップ2では、平成20年12月に改正が行われたステップ1(持分プーリング法の廃止)以外ののれんの非償却などが議論されている。
今回は、支配の喪失の取扱いに関して検討の方向性が示された。
支配の喪失を契機に投資の性質が変わるという観点で、子会社から関連会社になった(支配を喪失した)場合についても、平成20年12月に改正された段階取得との整合性から、残存投資部分について損益を認識することなどが提案された。
しかしながら、我が国の会計基準では、子会社から関連会社になる場合においては、投資が継続していると考えており、残存部分について損益を認識する処理は実態に合っていないとの意見もある。
子会社から関連会社になった場合に、投資の性質が変わるとみるのか、投資は継続されているとみるのか、今後の議論に注目である。
法務省は7月18日、法制審議会会社法制部会会議を開催し、事務職側から提示された「第一次案」をもとに「会社法制の見直しに関する要綱案」の検討を実施した。
これによると、以下の事項が検討されたようだ。
1.監査・監督委員会設置会社制度の創設
2.社外役員の独立性の強化
3.監査役の監査人の選解任・報酬に関する決定権の付与
4.多重代表訴訟制度の創設
社外取締役の義務化については、経済界の反対により見送られたようである。
「多重代表訴訟制度」とは、親会社の株主が子会社の役員に対して株主代表訴訟を提起できる制度のことである。これまでは親会社の株主は子会社の役員を直接追及することはできず、親会社の役員が子会社の役員を兼務する場合等が多いため、親会社の取締役を通しての追及も難しかったことが背景にある。
今回の法改正の検討からも分かるように、これから監査・監督に関する法整備がより一段となされることになる。