金融庁より、7月6日、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」が公表された。この改正は、「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」の改正に伴う、用語等を修正するもので、連結財務諸表に限られた改訂。
主な改訂内容は、主に2つある。
まず、退職給付会計基準等における、「退職引当金」を「退職給付に係る負債」とし、「前払年金費用」を「退職給付に係る資産」とすることとされる。
次に、これまでオフバランス処理されていた「未認識数理計算上の差異」及び「未認識過去勤務費用」等については、「退職給付に係る調整累計額」等の科目で「その他の包括利益累計額」の項目に表示され、その発生額や費用額等は、連結包括利益計算書(又は連結損益及び包括利益計算書)上、「退職給付に係る調整額」等の適切な科目で「その他の包括利益」の項目に表示することとなる。
この他にも注記の拡充が織り込まれている。
この改正案は、現在、改正案に対する意見募集中であるが、問題なく施行されれば、平成25年4月1日以後に開始する事業年度から適用することになる。
日本公認会計士協会(以下、「協会」という)は、平成24年7月12日に「退職給付に関する会計基準」等の公表に対する今後の対応について公表しました。
平成24年5月17日に公表された企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下、「新基準等」という。)では、会計制度委員会報告第13号「退職給付会計に関する実務指針(中間報告)」及び「退職給付会計に関するQ&A」(以下「実務指針等」という。)を承継・必要な改正を行っており、協会は実務指針等の廃止に向けた手続きを今後進めていくことを予定しています。
ただし、新基準等は平成25年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から順次段階的に適用されるため、適用されるまでの間は実務指針等に基づいて会計処理していくことになるので留意が必要です。
金融庁は平成24年6月27日に企業会計審議会監査部会を開催し、監査基準の見直しについて議論した。
委員から会計不正に対する監査基準の見直しに際しては、海外動向、特に米国の監査基準に留意すべきという指摘がなされた。
日本では、近年、会計不正が増加傾向にあったが、米国では大型の会計不祥事が発生していない。
このため、結果的に、米国のルールの方が不正に対しては、有用だったということでしょうか?
両基準の違いとしては、例えば、以下の点が指摘されている。
・不正のリスク評価に際してのリスク要因分析は、米国では必須とされているが、日本基準では要求されていない。
・日本では「監査証拠による反証がない限り、通常、記録や証憑書類を真正なものとして受け入れることができる」が、米国では、「規定の要求を弱める」という理由で削除されている。
そのほか、監査事務所レベルの対応として、会計不正に対する教育、不正対応の専門家(フォレンジック、不正検査士等)の活用なども有用という指摘がなされている。
今後の企業会計審議会監査部会の議論に注目である。
金融庁は、平成24年5月30日に企業会計審議会監査部会を行い、昨今の不正を踏まえ、監査基準等の見直しを行うこととした。
その中では、
・「違法行為の発見は監査人の義務ではない」と考える監査人と、「重要な違法行為は監査人に発見してもらいたい」と考える利用者の考えのギャップ(いわゆる期待ギャップ)を埋めるために、広範な監査手続なども議論すべき
・金融庁や公認会計士協会におけるレビューが厳しく、調書の作成に多くの時間が費やされ、実際の監査が行われる時間が減っている
・被監査会社との直接契約による心理的な圧迫感
などの意見があった。
現在、監査人を頻繁に変更することは、良くないような風潮があるが、積極的な監査人の変更により、新たな視点から監査を受けることも企業の信頼度をあげる上で有用と考えられる。監査人の交代や不正に対応する監査手続の増加は、被監査会社への負担が増加することになるが、それをどう解消していくのか。財務諸表監査のメリットを受ける立場として、監査報酬を、被監査会社のみではなく投資家にも監査報酬の一部を負担してもらうことなども案として考えられるのではないか。
我が国にも公認不正検査士(CFE)など資格も存在するが、今後これらの専門家の利用が増加していくのであろうか。重要な虚偽表示につながる不正の発見に対する財務諸表監査への期待ギャップをどのように埋めていくのか。今後の議論に注目である。
2012年5月16日、JICPAは「年金資産の消失事案を受けての監査及び会計の専門家としての提言」を公表した。
提言の内容は主に以下の4つである。
①年金基金の財務諸表の会計監査の活用
現状では、年金基金の監事の意見が付された決算報告書が厚生労働大臣に提出されているが、会計士等の会計専門家による監査は行われていない。会計士の監査を実施することで開示の信頼を得られるものと考えられる。
②私募ファンドの監査又は監査報告書の確認
年金資産の運用先の私募ファンドの中には、法的形態により会計監査が要請されているファンドもあれば、監査を行っていないファンドも存在する。監査を行っていないファンドに対しては、任意監査という形で会計監査を行うことが望ましい。また、監査が行われていたとしても、年金基金の理事等は運用先の私募ファンドの監査報告書を確認することが望ましい。
③投資一任先の会計監査の実施
上記の私募ファンドに対する監査と同様、投資を一任している投資顧問会社についても監査が行われることが望ましい。また、監査が行われていたとしても、年金基金の理事等は投資顧問会社の監査報告書を確認することが望ましい。
④年金資産の運用に係る検証及び内部統制報告の利用
年金基金の理事等は投資顧問会社がGIPS基準に準拠した表明を行い、それについて会計士等の検証を受けているか確認することが望ましい。
また、投資顧問会社の資産運用業務について、会計士等による内部統制の保証報告書の受領の確認も有効である。
※GIPS基準・・・グローバル投資パフォーマンス基準の略であり、資産運用会社による見込・既存顧客に対する投資パフォーマンス実績の公正な表示と完全な開示を確保するために定められた世界共通の基準。
監査業務を通じて、年金資産の消失事案の再発防止だけでなく、加入者の保護にも役立つことが期待されている。
2012年5月に、IFRSに関するコンバージェンス活動の一つで、非常に重要な論点である退職給付の改正作業が完了し、改正企業会計基準「退職給付に関する会計基準」と「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表された。
従来、未認識の数理計算上の差異及び未認識の過去勤務債務については、退職給付引当金に加減されて貸借対照表に計上されていたが、改正基準では、税効果を調整した上で純資産の部(その他包括利益累計額)に認識されるようになる。また、負債に計上される退職給付引当金は、「積み立て状況を示す額」である退職給付債務と年金資産の差額が計上されることとなる。
退職給付債務や勤務費用の計算方法、注記方法の見直しもなされているため、留意すべきである。
当改正については、未認識の数理計算上の差異及び過去勤務については2014年3月期に係る連結財務諸表から、退職給付債務・勤務費用の計算方法については2014年4月1日以後に開始する事業年度から適用となる。
法務省は4月18日、法制審議会会社法制部会議事録等として、企業統治に関する個別論点の検討経過を公表した。
これは、「会社法制の見直しに関する中間試案」に対して、1月末までになされたパブリック・コメントを踏まえたものである。
会計監査人に関係する部分でいえば、監査役の監査機能としての「会計監査人の報酬等の決定」があがっている。
(現状の問題点等については、以前に紹介した内容をご確認いただきたい。)
パブリック・コメントの意見は、次のようなものである。
・会計監査人の報酬決定は会社の業務執行であり、業務執行は経営判断を伴う取締役の権限である
・監査役が会計監査人の報酬決定を行うことにより、監査報酬の高額化が懸念される
この意見は、業務執行に責任を負わない(業績に責任がない)監査役が、会計監査人の監査報酬という費用発生原因を決定することについて、異議を唱えるものと思われる。
これに対し会議資料では、会計監査人の報酬に関し、会計参与や監査役と同様の規定とすることについて、検討余地があるとしている。
すなわち、会計参与と監査役は、その報酬が定款又は株主総会決議により決定され、かつ、株主総会での意見陳述権を有するという規定(379条、387条)を、会計監査人にも適用しては、ということである。
(現行規定では、取締役が会計監査人の報酬を決定する。株主総会での意見陳述権はない。)
会議資料によれば、これにより、パブコメ意見にある「懸念に対処することになると思われる」とのこと。
ただし、この場合には、議案決定権をどの機関に与えるべきかなどについて「検討する必要がある」としたところで、本論点の検討は結ばれている。
会計監査人の独立性は、監査の実効性を左右しかねないために重要とされる。
また、会社法制部会の検討結果は実務に影響するものでもあるため、継続して注目したい。
平成23年度税制改正に欠損金の繰越控除制度の見直しが盛り込まれた。
中小法人等以外の青色申告法人(一般的に言う上場企業)においては、
(1) 繰越欠損金の繰越期限9年に延長
(2) 繰越控除額は、繰越控除をする事業年度の控除前所得金額の100分の80相当額とする。
が適用される。
また、適用時期については以下のようになっています。
(1) 繰越期間延長の適用時期は平成20年4月1日以降終了事業年度で生じた繰越欠損金額に遡及して適用
(2)控除限度額制限の適用時期は、平成24年4月1日以降開始事業年度より適用
これに伴い、繰越欠損金の控除限度額制限(100分の80)、繰越期間の延長(7年から9年)及び適用時期については、税効果会計におけるスケジューリングに影響するため、留意が必要である。
平成24年3月22日、日本公認会計士協会は、「年金資産の消失に係る会計処理に関する監査上の取扱いについて」を公表した。
最近新聞等で報道されている投資顧問会社と投資一任契約を結んだ年金基金に関する年金資産の消失についての会計処理が示されているので、ここで紹介する。
今般、金融庁から業務停止命令を受けた投資顧問会社と投資一任契約を結んだ年金基金の年金資産は、その大半の消失がほぼ確実に見込まれるとされる。したがって、本事件が明らかになった事業年度において、当該年金資産の消失を財務諸表に反映させる必要がある。
具体的には、年金資産の消失が見込まれる金額を合理的に見積り、退職給付引当金を計上し、本事件に関する損失額は、特別損失として計上される。
また、総合型厚生年金基金に加入し「退職給付に係る会計基準注解」(注12)で定められる複数事業主制度の処理を採用している企業は、当該年金制度への要拠出額を退職給付費用として処理し、所要の注記を行う必要がある。
将来の掛け金拠出等へ一定の大きな影響が重要であると想定される場合は、退職給付に係る注記事項において、当該事案の概要、将来の掛け金等への影響が有る旨などを補足的に説明する。
今回は平成24年3月期決算の開示上の留意点を紹介する。
(1)「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の適用による留意点
①注記内容の拡充
会社計算規則では平成23年3月31日付の改正により、『会計方針の変更に関する注記』、『表示方法の変更に関する注記』、『会計上の見積りの変更に関する注記』及び『誤謬の訂正に関する注記』が注記に追加される。
②株主資本等変動計算書の記載
『前期末残高』ではなく、『当期首残高』と記載する。
(2)包括利益の表示に係る組替調整額の注記
平成24年3月31日以降終了の連結会計年度より『組替調整額の注記』が必要になる。
(3)税制改正による税効果会計への影響
いわゆる復興特別法人税及び法人税率の改正により法定実効税率が変更されるため、法人税等の税率変更による影響額等の注記が必要になる。