ごあいさつ

ようこそお越し下さいました。
このページは、アリアメンバーが最新の業界情報についてアップロードしております。
経済情勢や基準等が目まぐるしく変化する昨今、少しでも参考にして頂ければ幸いです。
なお、文中の意見に係る部分は各メンバーの私見であり、法人の見解とは関係がありません。

085 上場企業の業績予想開示が任意に

 東京証券取引所が2011年7月29日に公表した「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」では、業績予想開示の重要性の見直しがなされ、上場企業の業績予想開示を任意とする方向で検討を行っている。また、非開示とする場合の理由の如何も問われないこととなる。

 ほとんどの上場企業は決算短信において、業績予想を開示するが、業績予想として開示した数値が予想から乖離する可能性が高くなった場合、業績修正開示が必要となるなど、その作成にあたっては事務負担が大きくなっている。

 一方、開示情報の受け手である投資家は企業の業績予想開示を重視し、自らの経済的意思決定に役立てることができる。また、会社側も自社の成長予想を数値で表すことができるというメリットもある。

 このように、業績予想開示は投資家と企業とのコミュニケーション手段の一つとも考えられるため、業績予想開示については、企業側に費用と効果の比較考量が求められるであろう。

084 日本板硝子がIFRSを任意適用

 日本板硝子は、2012年3月期第1四半期報告書からIFRSを任意適用して開示した。これで、任意適用を行った会社は、日本電波工業、HOYA、住友商事に続き4社目になります。

 内容を見てみると、IFRS移行に伴い、営業利益に対して大きな影響があり、その影響額は2011年3月末で+8,515百万円(137.9%増)、2011年度第1四半期で+3,717百万円(59.3%増)となっています。内訳としては、「のれんが償却されない」ことに伴う費用の減少と退職給付会計における「数理計算上の差異が包括利益として処理される」ことによる費用の減少が、影響額の大半を占めています。

 このように、IFRSを適用することでかなり財政状態や経営成績が変わるため、投資家にとってはIFRS適用会社と非適用会社の比較は非常に難しい。比較可能性のなさは、国際競争の中、資金調達面や様々な面で企業を非常に不利な立場に追いやることになる。

 東京商工リサーチのアンケートによると、105社が既にIFRSの任意適用を検討しているとのことだ。企業が国際化の流れを汲み取って、早期に自主的に適用を行っていく姿勢は非常に重要である。もたもたと議論が進まない企業会計審議会や金融庁を企業が引っ張っていくよう、これからの企業の自主的なIFRSに対する取り組みに期待したい。

083 IFRS適用の行方

 9月2日に成立した野田内閣において、自見金融担当大臣が再任された。自見大臣は6月にIFRS適用時期に関する発言が注目されたが、その発言は大臣の政治主導によるものではないようであり、今回の再任がIFRS適用時期を左右するものではないと考えられる。

  IFRS適用時期に関連するニュースとしては、大臣よりもむしろ金融庁参与の方が興味深い。大臣再任に先立ち、8月29日付でIFRSの検討のために任命された参与には、学者やアナリストは含まれず、3名全員が経済界の出身である。

 現在のところ経済界は、IFRS適用に5~7年の準備期間を置くなどの米国の方針に追随する動きを見せており、参与がこのような経済界の意見を代弁していくであろうことを踏まえれば、日本のIFRS適用は米国に追随するという構図が改めて浮き彫りになったと見ることもできるのではないだろうか。

号外 退職給付会計基準の強制適用が延期

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、2011年8月、企業の従業員に対する年金の積立不足分を発生時に負債に計上すると定めた退職給付会計基準の強制適用時期を1年間延期することを決定した。それにより、適用は早くても2013年3月期末からということになる。

 もともとこの基準の改正は、国際的な基準の整合性を保つために検討されている事項であり、2011年6月に公表された国際財務報告基準(IFRS)の「IAS第19号 従業員給付」に明記され、また、米国では既に適用されている。

 ここで問題になっている「年金の積立不足」とは、日本基準でいうところの過去勤務債務や数理計算上の差異の未認識部分のことになる。現在の会計基準では、退職給付水準の変更で退職給付債務が増減したり、割引率の変更や年金資産の実際運用収益と期待運用収益との差異が発生した場合、その全部を一括して負債に計上するのではなく、一部に関してのみ毎年定期的に負債を計上する方法が規定されている。つまり、その一部に関しては、貸借対照表には表れていない「未認識の」負債である(注記には記載されている)。今回延期された基準によると、この未認識の負債も貸借対照表に記載すべきであり、この一部に関しても一括で負債に計上すべきという事である。

 この基準によると、未認識の数理計算上の差異及び未認識の過去勤務債務については、負債(退職給付引当金)を全額計上するとともに、以下のように、一括して「その他の包括利益」を計上することになる。

  その他の包括利益 xxx / 退職給付引当金 xxx

 この積立不足の金額は、企業によっては相当の金額になっているため、多くの企業から異論が相次いでいる。対応にコストがかかることや、決算書の自己資本が目減りし、配当の判断に影響があるといった意見である。

 これに応じるように、ASBJでは現在、負債計上に一定の猶予期間を設けることや配当原資を定める決算書では当面負債を計上しない、などの方向で議論しているとのこと。

 影響が大きい事項であるため、企業の状況とIFRSとの整合性のバランスをうまく取るような解決法に期待したい。

ASBJの改正案の概要についてはこちら

082 資産除去債務 小売業へのB/Sに与える影響が顕著に

 平成23年3月期より「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号)が適用となった。当該会計基準の適用を受け、小売業における資産除去債務の総資産に対する比率が1.06%と、電力業に次ぐ高さであるという興味深い調査結果がある。

 小売業では、賃貸資産等を多用し、事業展開しているという特性により、当該会計基準の影響を大きく受けていると考えられる。特に小売業の中でも外食産業は、2.07%と影響が顕著にあらわれ、小売業平均値の倍の結果であった。また、過去の退店実績をもとに使用期間を合理的に見積もることが可能であるため、小売業では負債計上を見送った会社は少ないのも要因の一つに挙げられるのではないだろうか。

081 平成23年版中小企業会計指針の公表について

 平成23年7月20日に、日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の関係4団体が設置している「中小企業の会計に関する指針作成検討委員会(以下、委員会)」は、「平成23年版中小企業会計指針」を公表した。中小企業会計指針は、委員会が、設定主体となって、中小企業が計算関係書類を作成する場合に拠るべき会計指針として定めたものである。
 平成23年改正の主な改正点は、以下のとおり。

1.会計方針の変更、会計上の見積りの変更及び誤謬の訂正に関する注記などの扱いの改訂
2.満期保有目的の債券の定義の改訂(満期まで所有する意図を持って保有する)
3.株主資本等変動計算書の用語の改訂(前期末→当期首)

 参照: 企業会計基準委員会(ASBJ)

080 監査・保証実務委員会報告第83号「四半期レビューに関する実務指針」の改正について

 平成23年7月8日、日本公認会計士協会より表題の件が公表された。平成23年4月1日以後開始する連結会計年度(事業年度)に係る四半期連結財務諸表(四半期財務諸表)の四半期レビューから適用されることになる。

①比較情報に係る四半期レビュー手続きの取扱い
 過年度の四半期情報等が修正再表示された場合などには、その情報が適切に表示及び分類されているかどうかを判断しなければならないことになる。
②四半期レビュー報告書の記載
 第1・第3四半期の四半期連結キャッシュ・フロー計算書の作成等が任意になったことで、その作成の有無により、四半期レビューの対象にキャッシュ・フロー計算書が含まれるか否かが変わることになる。

 また、(1)四半期レビューの対象、(2)経営者の責任、(3)監査人の責任、(4)監査人の意見(結論)とこれまでと同様に4つに区分されるが、(2)~(4)についてはそれぞれ表題が付されることになり、その記載内容がより明瞭でわかりやすくなるだろう。

参照:日本公認会計士協会ホームページ

079 「IFRS9早期適用」

 住友商事は、2011年3月期の有価証券報告書において、IFRSによる開示を行っています。中でも注目に値するのが、IFRS9を早期適用している点ではないでしょうか。IFRS9では、金融資産は、償却原価かFVTPLのいずれかでの測定となりますが、FVTOCIも認められています。

 同社では、いわゆる持合株についてFVTOCIを採用したようです。理由は「投資先との取引関係の維持・強化による収益基盤の拡大を目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない」ことを挙げております。このFVTOCIは、公正価値の評価差額を、その他の包括利益に計上する方式で、従来問題視されていた売却による含み益をPL計上することはできません。この開示を契機として、持ち合い株の保有が商慣習として多い日本においては、FVTOCIを採用する会社は、増えていくものと思われます。しかし、海外、特に欧米のグローバル企業がどの程度、FVTOCIを採用するかは、今後、注目に値します。

078 上場企業の役員報酬に関する開示

上場企業の役員のうち、1億円以上の報酬を受け取った場合、役員の個人名と受け取った報酬の金額の開示が、昨年、金融庁により決定され、スタートした。この制度は、コーポレートガバナンスを強化するため義務化されたものであり、有価証券報告書において開示される。

この開示も今年で2回目を迎える。昨年は開示初年度ということもあったのか、どのように金額を導き出したのか不明確な開示が多く、決定方法の開示が乏しかったとされる。経営者が株主への説明責任を果たすための財務会計の情報提供機能として、役員へ支払う報酬の決定方法についても、今年はより明確な開示が期待される。

077 新リース会計の使用権モデルへの懸念

 以前に、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が公表した「リース」の公開草案の「使用権モデル」についてお伝えした。これを受け、日本でも「リース」会計基準の改訂が検討されており、企業会計審議会(ASBJ)は「リース会計に関する論点の整理」についてコメントを募集した。その中でも借手側の使用権モデルによる会計処理について多くのコメントが寄せられている。

 使用権モデルでは、オペレーティング・リース取引を含む、すべてのリース取引を、リース期間におけるリース資産の使用権取得取引と捉える。これによれば、オペレーティング・リース取引とファイナンス・リース取引の区分の恣意性を排除することができる。しかし、リース契約には様々な形態が存在し、サービス的性質の強弱、契約期間の長短などの違いがある。そのため、使用権モデルによる会計処理を行った場合、それぞれのリース取引の経済的実態を的確に反映しないという批判がある。また、それまで認識対象とされていなかったオペレーティング・リース取引を認識する必要があるため、当該コストが、財務諸表利用者が享受するベネフィットを超えるおそれがある。

 現時点で、企業会計基準委員会はコメントの検討を行っているが、今後の改訂状況に注目する必要がある。