ごあいさつ

ようこそお越し下さいました。
このページは、アリアメンバーが最新の業界情報についてアップロードしております。
経済情勢や基準等が目まぐるしく変化する昨今、少しでも参考にして頂ければ幸いです。
なお、文中の意見に係る部分は各メンバーの私見であり、法人の見解とは関係がありません。

076  東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱い

 今回の東日本大震災において法人が災害を受けた場合、棚卸資産や固定資産の修繕などのために要する費用の見積額(①②いずれか多い方)を「災害損失特別勘定」として経理した場合には損金の額に算入できるとされた。

①被災資産(棚卸資産などの評価損を計上したものを除く)の被災事業年度等終了の日における価額がその帳簿価額に満たない場合のその差額に相当する金額
②被災資産について、災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる、被災資産の取壊・原状回復・障害物の除去などの費用の見積額。ただし、被災事業年度等終了の日の翌日以後に支出すると見込まれるものに限る。

 震災による被害を受けた企業の皆様には今回の取扱いによる税務メリットを最大限有効にご活用いただきたい。
 また改めて、今回の震災により被害を受けた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

074 国際会計基準と米国会計基準のコンバージェンス完了へ向けての報告

 現在、IASBとFASBは、国際会計基準と米国会計基準のコンバージェンスを促進するための共同作業を行っている。当初の計画では、2011年の6月までに終了させる予定だったが、2011年4月21日にプログレスレポート(進捗報告)を公表した。その内容は、以下のとおりである。
 まず、「連結財務諸表」、「共同アレンジメント」、「退職給付」について、今後数週間のうちに新たな基準書を公表する予定となっている。また、「公正価値測定」及び「その他の包括利益の表示」に関する新たな規定も数週間のうちに公表する予定である。
 次に、「金融商品会計」、「リース」、「収益認識」、「保険会計」については、優先度を上げて取り組んでおり、完了に向けて大きく前進している。
 この他、「財務諸表の表示」や「資本の特徴を有した金融商品」などのコンバージェンス・プロジェクトは、2011年6月以降に日程を延期することとし、2011年後半の完了とすることとした。
 上述のスケジュールの見直しにより、日本の会計基準のIFRSコンバージェンススケジュールにも影響を及ぼすものと思われるため、留意が必要である。

073 企業財務会計士の創設が白紙に

 金融庁は4月1日、公認会計士法改正等の国会提出を公表し、公認会計士の下位資格である企業財務会計士が創設されることがほぼ確定的と見られていた。ところが今般、同改正案は野党の反対に遭い、今国会では成立しない見込みとなった。

 新資格の創設には、その必要性や検討過程を疑問視する意見もあり、議論を尽くしたうえでの法案提出ではなかったと言えるだろう。しかし、未就職者や待機合格者(試験には合格したが、公認会計士としてまだ登録されていない者)の問題は重大であり、今後も議論は継続される見込みである。

 難関の試験に合格した優秀な人材を有効活用できないことは、当事者の損失にとどまらず、国にとっても損失である。今年1年かけて、より良い改正案が纏められることを期待したい。

072 「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について」の公表

 平成23年3月30日、日本公認会計士協会より表題の件が公表された。
災害損失について例示列挙・会計処理の取扱い
①固定資産や棚卸資産等の滅失損失
→保険付保状況に応じて処理、保険金未確定の場合には注記等の対応
②災害により損壊した資産の点検費、撤去費用等
→決算日までに実施されていれば未払金計上、決算日までに未実施で引当金の要件を満たせば引当金の計上
③災害資産の原状回復に要する費用、価値の減少を防止するための費用等
→修繕費に準じた処理
④災害による工場・店舗等の移転費用等
→移転費用に係る損失の計上、決算日までに実行されていない場合は注記による概要説明など
⑤災害による操業・営業休止期間中の固定費
→原価性が認められない部分は損失計上
⑥被災した代理店、特約店等の取引先に対する見舞金、復旧支援費用(債権の免除損を含む)
→交際費や寄付金に準じた処理
⑦被災した従業員、役員等に対する見舞金、ホテルの宿泊代等の復旧支援費用
→福利厚生費に準じた処理 

■災害に関連して考慮すべき会計・監査事象
①繰延税金資産の回収可能性の判断
②取引先の財政状態の悪化等
③保有有価証券の時価の下落
④固定資産の減損判定
⑤その他(継続企業の前提に係る疑義の発生など) 

 このような状況で決算を迎える企業様にとっては厳しい状況だと思うが、監査人による監査、企業の経理担当者の判断指針としても参考になるだろう。

070 業績不振企業の繰越欠損金の取扱い

 ドイツの法人税法8c条によると、一人の取得者や一つの取得者グループが25%超のドイツ法人の持ち分、もしくは5年以内に50%超を取得した場合、繰越欠損金の全部または一部を利用することができなくなる。この例外として、持分保有者の変更が企業再建を目的として行われた場合には繰越欠損金を利用できるとされている。しかし、欧州委員会は当該繰越欠損金を不当な国家支援として認定したため、ドイツの業績不振企業への優遇措置を撤回するよう求めた。

 ドイツ企業は見通しよりも多額な繰越欠損金を有しており、優遇措置の撤回が確定した場合には、税収減に歯止めがかかるであろう。一方、業績不振の企業は内部留保を持っていないことが多いことから、優遇措置が撤回された場合には、再建を果たすことがいっそう難しくなると思われる。ドイツに進出している企業については、動向を見守る必要がある。

069 企業ディスクロージャーとSR

 東証は2月3日、「ディスクロージャー表彰」を公表した。受賞企業が行った、法定開示に限定されない任意開示等が評価されたものである。どの企業も、内容はさることながら、視覚に訴える開示方法が非常に分かりやすく、表彰も納得できる。CSR(企業の社会的責任)などの、法定開示では求められていない内容も、任意開示の特徴的な点だ。

 ところで、CSRについては昨年、国際規格のISO26000が発行された。これは、日本規格協会のISO/SR国内委員会によれば、手引き(ガイダンス)規格となっており(認証規格ではない)、現在のところ、上記表彰企業であっても同規格に沿った活動を示している例は少ない。また、この規格では社会的責任は企業のみが負うものではないということで、CSRに代えてSR(社会的責任)として解説されている。

 ディスクロージャーを語る上で、今後ISO26000が話題にのぼる機会は増えてくると思われるが、認証規格でない同規格が企業に受け入れられるかどうか、注目していきたい。

068 「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正(公開草案)について

平成23年2月24日、日本公認会計士協会より表題の件が公表された(意見募集は平成23年3月17日まで)。

この改正は以下の基準等の適用や他の報告との統合によるものである。
・会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び同適用指針の適用
・平成23年度税制改正(注:政令等がまだ公表されていないため、内容の変更可能性あり)
・監査第一委員会報告第32号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」を統合

 押さえておいたほうがよいポイントは以下の3つ
①減価償却方法とその変更時の取扱いについて明文化
・減価償却方法は「会計方針」であると明確化された
・減価償却方法の変更は「会計方針の変更」であるが遡及修正はしない

②耐用年数の変更の取扱いを明確化
・耐用年数の変更には2種類「過去の誤謬の訂正」と「会計上の見積りの変更」がある

 会計上の見積りの変更(過去に定めた耐用年数の見積りは合理的で、事後の変更の際の見積りも合理的である)の場合は、残存耐用年数にわたる将来期間で損益認識する。

 過去の誤謬の訂正(過去に定めた耐用年数の見積りが合理的ではなく、事後の変更の際の見積りは合理的である)の場合は、過去にさかのぼって修正再表示する。

 ③平成23年税制改正
・平成23年4月1日以後取得する減価償却資産の定率法の償却率は、定額法の償却率を2.0倍した数で償却。
・現行の償却率による定率法を採用している減価償却資産については、平成23年4月1日以後最初に終了する事業年度の申告期限までに届出をすれば、改正後の償却率に変更できる

 適用時期は、平成23年4月1日以後開始の事業年度に係る監査から適用される。

066 外国税額控除、配当免除制度の拡大措置について

 平成23年税制改正大綱にて、外国税額控除、配当控除制度の拡大措置がなされる見通しである。具体的には、確定申告が両者の適用要件となっているが、今回の改正により、確定申告をすべき時期に確定申告をしなくとも、事後的に確定申告をすれば適用が可能となる。また、控除の限度額は申告書の記載額を上回ることが認められる。これらの改正は、平成23年4月1日以後に法定申告期限などが到来する分について、適用することができる。

064 財務報告体制の整備とアカウンティングポリシーの役割

 アカウンティングポリシーとは、IFRSが原則主義を採用しているために必要となる、企業が採用する会計方針を詳細に記載したものである。アカウンティングポリシーの作成は、質の高い財務報告の体制の整備と業務の効率化を可能にする点で非常に重要である。

 IFRSの財務報告体制について、グループ各社が今まで通り、地域の慣行や独自の方法で財務報告をする場合、それらをまとめる作業だけで手いっぱいになり、企業にとっては、財務報告の作成が非常に困難なものになってしまう。当然IFRSでは「グループ内で行われた同一の取引について、同一の会計処理」が求められる。その時に非常に有効となるのが、アカウンティングポリシーである。アカウンティングポリシーを用いることで、グループ内の情報伝達を強化し、会計・財務あるいは業務マニュアルの標準化の達成が可能となる。システムの設計やグループ内の情報収集の方法も、アカウンティングポリシーに従って設計されるため、グループ内において、財務報告だけでなく、関連業務に関しても内部統制が統一的に整備されていく。

 確かにアカウンティングポリシーの導入は、企業にとって、費用・作業面で大きな負担が生じる。しかし、企業のグループ内統制を見直す絶好の機会であると考え、アカウンティングポリシーの導入・整備を真剣に考えてみる必要がある。

063 仕入税額控除に制限

 平成23年度税制改正大綱が閣議決定され、消費税法に関しては、仕入税額控除に大きな影響が生じることになる。

 従来、課税売上割合が95%以上の場合には、課税仕入等に係る消費税額の全額を仕入税額控除の対象としていたが、今回の改正では、課税売上高が5億円を超える場合には、課税売上割合に関係なく、課税売上に対応する部分のみが仕入税額控除の対象となる。

 課税売上高が、5億円を越えるか否かの判断は、当該課税期間の課税売上高で判断することに留意が必要である。

 本改正は、成24年4月1日以後開始する課税期間から適用される。