HOYA株式会社は1月31日、「指定国際会計基準による連結財務諸表の作成に関するお知らせ」を公表した。これは、有価証券報告書等の法定開示を、今後は日本基準に代えてIFRSにより行うというもの。
同社は、任意開示によるアニュアルレポート(12/21公表)でIFRSを適用していた。この中では初度適用を実施し監査報告書も付されていたことから、IFRSの任意・早期適用の準備と見られていたところである。
さて、12月24日の知恵の輪でもご紹介したように、現在、任意適用に向けて取り組んでいる上場企業は、全体の6%程度であるとのこと。企業がIFRSに関する社内教育に取り組んでいるとの話を耳にする機会が増えてきており、今年は日本電波工業以外のニュースも多くなりそうだ。
2011年1月20日、企業会計基準委員会より「顧客との契約から生じる収益に関する論点の整理」が公表された(意見募集は2011年3月28日まで)。
本論点整理では①範囲、②認識、③測定、④不利な履行義務、⑤契約コスト、⑥表示及び注記、収益の総額表示と純額表示など9つの個別論点について検討が行われている。
本論点整理を検討するにあたっては、次の考え方が軸となっている。「顧客への財又はサービスの移転を描写するように、財又はサービスと交換に企業が受け取る対価を反映する金額により、収益を認識しなければならない」というもので、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)により公表された「顧客との契約から生じる収益(公開草案)」のなかで提案されたものである。
「描写するように」、「対価を反映する金額により」などが収益の認識・測定方法などに表れてくるものと思うが、これまでの日本の会計実務ではなじみのない考え方も多く含まれていて、読み解くには時間がかかりそうである。
米国では、2011年に米国企業向けの財務報告システムにIFRS
を強制適用するかどうかが決定されます。そのIFRSの強制適用の
決定に先立ち、現在、米国の会計基準の設定主体であるFASB(財
務会計基準審議会)と国際会計基準の設定主体である国際会計基
準審議会(IASB)は、アメリカ会計基準とIFRSの重要な相違点をな
くすことを、2002年に合意しています(ノーウォーク合意)。この合意
に基づき覚書書(MoU)が交わされ、「MoUプロジェクト」が開始さ
れました。現在、2011年6月までに、重要な相違点を解消すべく
IFRSの改訂作業が行なわれております。MoUプロジェクトでは、
収益、リース、財務諸表の表示、金融商品等多岐に渡って、抜本的
な見直しをおこない、現在のIFRSは大幅に改正されると言われて
います。この2011年は、IFRSが大変革する年になりそうです。(な
お、IASBの公表されたスケジュールによると、現在MoUプロジェクト
は、計画より遅延しており、IFRSの基準改正も2011年7月以降に
ずれ込みそうです。)
平成23年度税制改正大綱が閣議決定され、貸倒引当金の見直し
が予定されている。
現行では、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区別し、税
務上、貸倒引当金繰入額の損金算入が認められる。しかし、税制大
綱によると、銀行、保険会社その他これらに類する法人及び中小法
人を除いては税務上、貸倒引当金の損金算入が認められなくなるこ
ととなる。そのため、税効果を考えた場合、会計上と税務上の乖離が
これまで以上に大きくなることから一時差異も増えると考えられる。
東京証券取引所は12月28日、マザーズの上場制度見直し要綱
である「マザーズの信頼性向上及び活性化に向けた上場制度の整
備等について」を公表した。昨年の粉飾決算発覚等を踏まえ、信頼
回復のための施策をまとめたものであり、他の資本市場関係者にも
一層の努力を求めるものとなっている。これに伴い、日本公認会計
士協会には監査品質向上等が要請され、同協会からはその要請文
書が公表された。
会計・監査業界は、その他にもIFRS対応に関する検討や、内部統
制・四半期報告制度の見直しなど多くの課題を抱えており、今年も業
界を取り巻く環境は大きな変化が続きそうである。
平成22年12月22日、企業会計基準委員会より、「四半期財務諸
表に関する会計基準」及び「四半期財務諸表に関する会計基準の
適用指針」並びにこれらに関連する企業会計基準及び企業会計基
準適用指針の改正に関する公開草案が公表された。
今回の改正(案)は四半期報告の大幅な簡素化を図ることが主な
目的であり、その主な内容は以下のとおりである。
・第1・第3四半期会計期間におけるキャッシュ・フロー計算書を省略
できる。なお省略した場合には減価償却費及びのれん償却額の金
額を注記する。
・注記事項の削除(表示方法の変更、簡便的な会計処理の記載、
1株当たり純資産額、発行済み株式総数等、ストック・オプション関
係)
・その他注記、記載内容の見直し
四半期報告制度においては適時性・迅速性が求められることから、
投資者の意思決定のための重要な情報が確保されることを条件に、
このような簡素化には一定の意義があるものと思われる。
早ければ2015年には、強制適用がされると言われている国際財務会計基準(IFRS)。しかし、日本でのIFRSの任意適用は、2010年3月期に既に始まっています。国内で初めてIFRSを適用したのが、日本電波工業㈱でした。
引き続き、2011年3月期では住友商事㈱が、2012年3月期には日本板硝子㈱がIFRSを任意適用すると公表しています。その他にも、日産自動車㈱、富士通㈱やパナソニック㈱らが、適用に向けた準備を進めているとのことで、日本におけるIFRSの波は、強制適用を待たずに到来しそうです。
さて、日本基準とIFRSでの大きな違いの一つに、開示に対する考え方があげられます。IFRSでは細則を設けず、原則で示す会計基準であるため、開示や会計基準に関するルールは会社ごとに定めます。また、原則に則れば、様式や表現を自由に行うことができ、投資家に対してどのように財務報告を行うかを、会社が設計できるようになっています。
はたして、日本におけるIFRS先行適用企業が、どのような開示を行うのか。私たちも、注意して見守る必要があるでしょう。
東京証券取引所は11月15日、東証の全上場会社を対象としたアンケートをまとめた「IFRS準備状況に関する調査結果」を公表した。
調査結果によれば、強制適用が見込まれる2015年 ~2016年3月期に向けて準備を始めている会社が約3分の2、未だ準備を始めていない会社は約4分の1である。任意の早期適用を検討しているのはわずか6%である。
ところで、国内では、現在も日本電波工業に続くIFRS早期適用会社は無いが、早期適用を予定する会社は出始めている(住友商事、日本板硝子)。しかし、上記のとおり任意の早期適用を検討している会社はほとんどないことから、これらが開示されれば貴重な先例となっていくと考えられる。
国際財務報告基準財団(IFRS財団)は、2010年11月19日付で、
教育文書(Occasional Education Notes)として、「減価償却と
IFRS(Depreciation and IFRS)」を公表し、その仮訳を企業会計
基準委員会が12月3日に公表した。
今後、IFRSの適用を考えている企業がIAS第16号を適用するに
あたって参考となるであろう情報が含まれる。以下の内容について
述べられており、もし興味があれば仮訳・原文ともに参照されたい。
・固定資産の構成要素ごとの会計処理について
・残存価額の明示的な見積りについて
・耐用年数の明示的な見積りについて
・減価償却方法の多様化について
現在の日本の会計実務では、固定資産の減価償却について法人
税法で規定する耐用年数、残存価額、償却方法が用いられることが
多い。今後IFRSへと移行するにあたって、それらのことを企業が独
自に決定していく必要がある。企業や監査人には多くの「判断」が
求められ、多くの負担を強いられることになると予想されることから、
徐々に準備を進めていきたいものである。
当法人でもIFRSの出版物「実務に使えるIFRS完全導入ガイド
(CD-ROM付)」の刊行等に携わっており、もし興味があれば、以下
のアマゾンのホームページで購入可能です。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Djp-books-tree&field-keywords=%82h%82e%82q%82r%8A%AE%91S%93%B1%93%FC%83K%83C%83h
グループ法人税制が創設されたのに伴い、会計制度委員会報告書第6号『連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針』及び同第10号『個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針』(以下、本実務指針)の改正が行われ、平成22年9月3日に公表されている。
本実務指針では、グループ法人税制の適用に伴って行う税効果会計の取扱いについて、明記されている。
ここで、グループ法人税制とは、完全支配関係にある法人グループ内の資産の移転等の取引について、課税をしないようにする制度である。これは、持株会社化など、グループ企業を一体とした経営が行われている実情に即して、制定された制度である。このグループ法人税制制度の適用開始は、平成22年10月1日以後に行う取引について適用される。
グループ法人税制は、上場会社のみではなく、完全支配関係があれば非上場会社でも、強制的に適用されるため、その影響は大きいと思われる。