金融庁は、平成25年9月6日に平成24年度有価証券報告書のレビュー実施結果を公表した。
無形固定資産(のれん含む)や投資有価証券(ファンド含む)の評価の他、関連当事者取引(役員に対する貸付を含む)が「重点テーマ」として審査されたが、一部の会社で、のれんの計上・減損損失等に関する不明瞭な記載や、関連当事者取引に関する記載漏れ等、適切な開示がなされていない事例があったようである。
関連当事者取引では役員に対する貸付も審査対象になったようであるが、当該取引の概要のほか、貸付がある場合の回収可能性の判断方法及びその根拠など、少し踏み込んだ質問が行われたようである。
金融庁は関連当事者との取引の開示に関しては、関連当事者の範囲を網羅的に把握し、取引の内容等の必要な事項を正確に記載する必要がある点を留意点として挙げている。
東京証券取引所は「有価証券上場規定等の一部改正」を行い、2013年8月7日に公表した。
当該規則は2013年8月9日から施行される。
今回の改正は、
①虚偽記載等に関わる上場廃止基準の取扱いを明確化することによって、投資家の予見可能性を向上させること
②特設注意市場銘柄制度(※)の投資家への注意喚起機能を適切に発揮させること
等を目的としている。
主な改正点は以下の通りである。
①虚偽表示又は不適正意見等に起因する上場廃止基準の取り扱いの明確化
(1)上場会社が有価証券報告書の虚偽記載を行った場合等の一定の要件を満たし、かつ、「直ちに上場廃止としなければ上場の秩序を維持することが困難であることが明らかなとき」に上場廃止とすることを明確化
(2)上記の基準に該当しない場合であっても、一定の場合は上場廃止になることを明確化
②特設注意市場銘柄制度の見直し
(1)会社情報の適時開示等に関わる規定に違反した場合であって、内部管理体制等の改善の必要性が高いと認められる時等、特設注意市場銘柄の指定対象の拡張
(2)内部管理体制等の改善期間を、原則3年から1年へ短縮
③有価証券報告書等の提出遅延に係る上場廃止基準の見直し
上場廃止事由となる、提出期間の延長の期限を短縮
④上場契約違反金の額の見直し
上場契約違反金の額を、一律1,000万円から、年間上場料金に比例した金額に変更
詳細は下記の東京証券取引所のサイトをご参照ください。
特設注意市場銘柄の積極的な活用等に係る有価証券上場規程等の一部改正について(PDF)
http://www.tse.or.jp/rules/regulations/b7gje6000000myd3-att/b7gje6000003o0v4.pdf
※特設注意市場銘柄制度
有価証券報告書へ虚偽記載を行うなどして上場廃止のおそれが生じたものの上場廃止までには至らない銘柄等に当該指定を行い、注意喚起を行う制度。
以上
退職給付会計基準が改正され、平成25年4月1日以後開始する事業年度の期首から早期適用することが可能となっている。平成25年3月期に係る有価証券報告書提出会社の中で、改正退職給付会計基準を早期適用する会社は44社に上っている。
主な変更点としては、
①未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法
②退職給付債務及び勤務費用の計算方法
③開示の拡充
④複数事業主制度の取扱いの見直し
⑤長期期待運用収益率の考え方の明確化
⑥名称等の変更
が挙げられる。
これらの内、②退職給付債務及び勤務費用の計算方法においては、適用初年度は損益に影響させず、利益剰余金に加減することが認められている。
前期末に重要性基準の枠内に収まり、割引率を変更しなかった会社が、改正基準の適用で割引率を引き下げた場合、影響額は利益剰余金から減額する。一方、前期末に割引率を引き下げた場合には、前期時点で、数理計算上の差異として損益処理される。
影響額を損益処理させたくない会社が早期適用を選択したと考えられる。