平成25年6月24日、日本公認会計士協会(会計制度委員会)は、会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」を公表した。
現状、引当金については、企業会計原則注解(注18)にその計上基準が示され、また個別の会計基準や監査上の取扱いなどはあるものの、包括的な会計基準は設定されていない。
実務では引当金の計上に関して、様々な処理がなされていることが想定されるため、平成22年10月に会計制度委員会に引当金専門委員会を設置し、有価証券報告書の開示状況の調査や主要な業種別委員会関係者からのヒアリング等を行い、引当金に関する個別論点の洗い出し、注18を基に具体的な会計処理及び開示についての考察、また国際財務報告基準(IFRSs)に照らした考察を行ったとされている。
この研究資料では、貸倒引当金や投資損失引当金などの評価性引当金を除く負債性引当金(賞与引当金、製品保証引当金、返品調整引当金、ポイント引当金、債務保証損失引当金、修繕引当金、事業撤退損失引当金、災害損失引当金等)を対象としたとされている。
また、退職給付引当金(リストラクチャリングに関連するものを除く)及び資産除去債務については対象としていないとしている。
詳細は以下の日本公認会計士協会ウェブサイトにあるので、興味のある方はぜひご覧ください。
会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」の公表について
平成25年6月12日、企業会計審議会総会・企画調整部会の会合で、わが国のこれまでのIFRS対応の議論が整理され、取りまとめが行われた。
今後、当局の報告書の取りまとめに向けた詰めの作業が行われる予定であり、IFRS対応の今後の方針は次のとおりである。
任意適用要件の緩和策として、従来、任意適用要件であった「上場」要件と「国際的な財務活動・事業活動」要件は撤廃する方向でまとめられる予定である。
IFRSの適用方法として、現行の指定国際会計基準を、IASBが作成する正式なIFRSとして残し、我が国独自の日本版IFRSを作成することとなるようだ。
また、金融商品取引法開示は連結ベースへ一本化し、単体情報の開示は、会社法開示を活用する仕組みとするなど、簡素化・効率化を図る方向でまとめられる予定である。
任意適用企業と、それ以外で、日本基準、日本版IFRS、IASBのIFRSと3つの会計基準による財務諸表が存在することとなり、財務諸表利用者側の立場では、比較可能性の点で問題が残るのではと思われる。
平成25年5月16日、企業会計基準員会は無形資産に係る会計基準の検討を行った。
無形資産に関しては、昨年の議論で検討課題を、企業結合により把握される無形資産、個別に取得する仕掛研究開発の2つに決め、調査を行ってきた。
①企業結合により把握される無形資産に関する意見
経営者が何を意図して買収を行ったが明確になる、といった積極的な意見に対し、実体のない資産が計上される恐れもあり、積極的に無形資産を識別・評価する基準の設定は避けるべきとの意見があった。現行の日本の基準では、無形資産の識別方法が不明確であることから基準の設定により、何らか方向性を示すことも期待されている。
②個別に取得する仕掛研究開発
IFRS適用企業との比較可能性が高まる等の意見に対して、現行の日本基準では様々な不整合が出ること、また製薬会社に特有の論点であって、日本基準を改正する緊急性に乏しいとの意見があった。
①は継続検討課題となり、②は他の関連する規定の処理などと合わせて整理する、ということでその日は終了し、前回から議論は進まなかった。それぞれの意見にメリット、デメリットがあり、議論は今後も続くと考えられ、最終の結論はまだまだ先になると思われる。