企業会計基準委員会は「退職給付に関する会計基準」(以下、平成24年改正会計基準)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下、平成24年改正適用指針、会計基準と適用指針を総称して「平成24年改正会計基準等」)が公表されてから2年が経過した。
退職給付会計の改正では、「未認識項目の処理方法」、「退職給付債務及び勤務費用の計算」、「開示の拡充」などの改正項目が規定されているが、早期適用は平成25年4月1日以後に開始する事業年度の期首から可能となっている。
平成26年3月期決算で早期適用を行った連結財務諸表作成会社は32社となっている。その内、28社が全ての項目を同時に早期適用していた。
強制適用開始時期は改正項目ごとに規定されているが、まだ適用していない企業では適用するにあたっての論点整理を行う必要があると思われる。
平成26年6月25日に金融庁から新規上場企業の開示規制を緩和する企業内容等の開示に関する内閣府令(案)が公表された。
主な改正内容は、新規上場時の有価証券届出書に掲げる財務諸表を現在の5年分から2年分に短縮する点と、
非上場のIFRS適用会社が初めて提出する有価証券届出書の連結財務諸表は比較情報を含む最近連結会計年度分のみの記載で可とするものである。
(金融庁HP_「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について)
http://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20140625-2.html
こちらは平成26年8月下旬に公布・施行される予定である。
金融商品取引法第24条第6項及び企業内容等開示府令第17条1項において、5年ごとに定款を有価証券報告書に添付することが求められている。
平成26年3月期の有価証券報告書の提出では、定款を添付しなければならない会社が多くなると思われる。
というのも、5年前の平成21年3月期に株券の電子化を受けて上場企業が一斉に定款を変更した経緯があるためである。
この5年間で定款に変更等がなかった会社は、有価証券報告書に定款を添付する必要がなかったが、この平成26年3月期がちょうど5年目となり再提出の時期になる。
5年前に定款を添付して以降、定款に変更がなかったため提出してこなかった会社と、定款に変更があったものの変更箇所のみの提出で全文を添付しなかった会社は留意する必要がある。
平成26年度の税制改正で、復興特別法人税が1年前倒しで廃止されることが決定した。
これに伴い、非上場株式を相続・贈与する場合の評価をする上で控除される法人税額等相当額の割合が、現行の42%から40%へと引き下げられる。
非上場株式を相続・贈与する際に、当該株式の評価を純資産価額方式で行う場合、一株当たりの評価額は以下の算式で求められる。
(総資産価額-負債の合計額-評価差額に対する法人税額等に相当する金額)÷発行済株式数
この内、「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」が、復興特別法人税の廃止により、40%へと引き下げられることになる。
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成26年3月31日に第284回企業会計基準委員会(平成26年3月27日開催)議事概要において、平成26年度地方税制改正に伴う税効果会計についての検討事項について公表した。
復興特別法人税が廃止され、平成26年10月1日以後開始する事業年度から「法人住民税法人税割」「地方法人特別税」「法人事業税」の税率改正、「地方法人税」が創設されたことによるものである。
本改正は、地域間の税源の偏在性を是正することを趣旨とするものであり、地方税と国税を合わせた税負担は変わらないことから、原則として法定実効税率に変更はないこととされている。
なお、公布日と決算期の関係により、取り扱いが異なるため、留意が必要である。
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成26年3月24日に第10回IFRSエンドースメント作業部会を開催し、IAS19号「従業員給付」の過去勤務費用について議論した。
過去勤務費用は給与水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加または減少部分を指す。
日本基準では、この過去勤務費用について、遅延認識を採用しており、将来期間に渡って徐々に当期純利益に反映させていく処理を適用している。一方、IFRSでは、即時認識を採用しており、発生した年度に発生した全額を当期純利益に反映させている。
この違いについて、以下の3つの案が提示されている。
①日本基準をベースに、過去勤務費用を当期純利益に遅延認識する。
②権利確定した過去勤務費用については純損益に即時認識し、権利が未確定の過去勤務費用については権利確定するまでの期間にわたって純損益に認識する旧IAS19号における過去勤務費用の規定をベースとして、過去勤務費用を当期純利益に遅延認識する。
③即時認識する処理を修正せずに受け入れる。
過去勤務費用は当期純利益に対するインパクトが大きい項目であるため、今後の動向に注目する必要がある。
自民党は、平成26年3月4日に、通常国会に提出する「金融商品取引法等の一部を改正する法律案」を取りまとめた。
金融商品取引法改正案の概要は、下記のとおり。
1.新規上場企業の内部統制監査は、3年間免除される。但し、一定規模の企業については免除されない
2.投資型クラウドファンディングの参入要件を緩和
3.証券会社が組成する「投資グループ」に限って投資勧誘できる新たな非上場株式の取引制度を創設する
4.大量保有報告制度の適用対象から、自己株式が除外される
5.大量保有報告提出者の事務負担が大幅に減少される
金融庁は平成26年1月14日、改正財務諸表等規則案を公表した。金融庁は平成26年3月から連結財務諸表を作成している会社などを対象として単体開示の簡素化を図る方針である。
簡略化が図られる主な内容は次のとおりである。
・本表について会社法の要求水準に合わせるため新たな様式を規定
・注記について連結で十分な開示が行われている項目の免除
・セグメント情報を開示している場合、製造原価明細は開示免除
これは国際的な財務報告の流れや財界や実務の意向を考慮した改正であるが、有用性が薄くなった財務報告の簡素化は財務諸表利用者の観点でも有意義と思われる。
以上
政府は11月29日、「会社法の一部を改正する法律案」と「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。
コーポレートガバナンス(企業統治)を強化するため、新たな機関設計として導入される「監査等委員会設置会社」の制度や、親会社の株主が子会社の経営陣の責任を追及できる「多重代表訴訟」の制度の創設が柱となる。
なお、上場企業への社外取締役の設置義務付けが以前より焦点となっていたが、経済界の反発を受けて見送られている。ただし、監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって有価証券報告書の提出が義務付けられている会社で社外取締役を選任しない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、定時株主総会にて説明しなければならないとした。
また、社外取締役や社外監査役の要件も、親会社や兄弟会社の業務執行者、当該会社の業務執行者の近親者が該当しないよう厳格化する。
さらに、改正法案附則にて、施行の2年後に、社外取締役の義務付けをあらためて再検討すると、将来的には義務化の検討がされることを明記している。
金融庁は、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令等を10月28日付で公布、施行した。
これまでIFRSを適用するためには、
①上場会社である
②有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに関わる記載を行っている
③IFRSに関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、当該基準に基づいて連結財務諸表を作成することができる体制を整えている
④国際的な財務活動・事業活動を行っている(外国に資本金が20億円以上の連結子会社を有しているなど)
の上記の要件をすべて満たすこととされていたが、今回の改正で①と④の要件が撤廃された。
現在、IFRS適用会社は、任意適用会社数16社、任意適用予定会社5社(東証公表 平成25年9月時点)となっているが、本改正により、さらに拡大いくことが予想される。