2013.11.20 IFRS新着情報 着々と動き出す制度改正。内閣府令改正とASBJ作業部会について
今月は、10月28日の内閣府令改正及び、10月23日に開催されたASBJの作業部会という2つの最近のIFRSをめぐる動向についてご紹介します。
1.内閣府令の改正
10月28日、金融庁はIFRS(国際会計基準)の採用に関する内閣府令を改正し、公表・施行しました。この改正府令の柱は、「IFRS任意適用要件の緩和」です。
内容は、9月に本ブログでお伝えした、金融庁、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」に沿ったものとなっています。
≪9月の内容はこちら≫
http://www.aria-audit.or.jp/ifrs/news/958.html
今回の改正で、IFRSを任意適用するための要件が大幅に緩和され、例えば、上場会社であること、外国に資本金が20億円以上の連結子会社を有していることなどの条件が撤廃されました。
この結果、IFRS採用可能な企業が621社から4061社に増加します。(金融庁調べ)
また、東京証券取引所の調べによると、現時点でIFRSの任意適用企業は予定を含めて21社となっています。
2.ASBJ、第4回 IFRSのエンドースメントに関する作業部会開催
10月23日、ASBJ(企業会計基準委員会)は「IFRS(国際会計基準)のエンドースメントに関する作業部会」の第4回を開催し、「金融商品」と「初度適用」について日本の会計基準とIFRSとを比較し、検討が必要な項目を抽出しました。
金融商品関連の会計基準で「検討が必要な項目の候補」となったのは、
・IAS32(金融商品:表示)の「金融負債と資本の分類」
・IAS39(金融商品:認識及び測定)の「金融資産の認識の中止」
・IFRS9(金融商品):
「資本性金融商品のOCI(その他の包括利益)オプション」
「公正価値オプションした金融負債の自己の信用リスク」
「非上場株式の公正価値測定」の5項目でした。
特に、「非上場株式の公正価値測定」の、持ち合い株について、非上場株であっても毎年、時価評価を求める項目については、IFRSを採用する企業の経理担当者の委員からは、
「時価評価を実施する意味があるのか」
「時価評価実施の手間が大きい」
といった指摘があり、一方、財務諸表を利用するアナリストの立場の委員は、「非上場企業の株式が会計不正事件の元になることもあり、時価評価は決してムダではないのでは」といった意見も出されました。
もう一つの議題だったIFRS1(国際財務報告基準の初度適用)は、IFRSに基づいた財務諸表を最初に適用する年に実施する処理について定めた項目です。
IFRS1ではIFRSに移行する初年度に、過去3期分の財政状態計算書(日本の会計基準の「貸借対照表」)、2期分の包括利益計算書(同「損益計算書」)、キャッシュフロー計算書、持分変動計算書をIFRSに基づいて作成することが要求されています。
これについて、事務局であるASBJからは、「IFRSを採用した企業から、IFRS1の適用は非常に作業負担が重いとの意見があり、エンドースメントされたIFRSならば、必ずしもIFRS1に準拠する必要はないとの考え方がある」との見解も示され、これについても各委員から活発な意見が出されました。
IFRS1をどのように適応すべきかについては、作業部会は「今後も議論を継続していく」との方向で議論を一旦終了としました。
以上、全体として、企業がIFRSを適用しやすいように、制度が動きつつあることがおわかり頂けると思います。