社会福祉法人の法定監査がはじまりました。~社会福祉充実残額について~
2017.09.12
平成29年4月1日より、社会福祉法人制度改革がなされ、他の法人形態には見られない制度が始まっています。
ひとつは、国内の全社会福祉法人の決算情報を、システムによって国が収集することになりました。
もう一つは、最低限必要な施設の建替費用、最低限の運転資金や運営財産を超える内部留保(これを社会福祉充実残額といいます)が生じた場合は、5年以内に全額費消する計画を建てることが、原則となっています。
余った社会福祉充実残額を、5年で全額使う計画を建てさせるのは、社会福祉法人にとっては酷な場合もあります。
なぜかと言いますと、大きく下記3つの理由からです。
1.経営にはある程度の余裕財産が必要なためです。
大企業でも、時に、大赤字を出します。
大赤字を計上しても、破たんしないのは、内部留保をしっかりと持っているからです。
2.介護報酬や補助金など、社会保障費は削減されていきます。
国家予算としては、増えたとしても、利用者一人当たりの社会保障費は確実に減っていきます。
つまり、社会福祉法人の収入は、年々減っていくのです。
近い将来の改正で、収入は減っていくのに、内部留保を強制的に使わせるのは、法人にとってはきついと思います。
3.最後に、社会福祉充実残額(余剰資金)の計算が、考慮されていない部分があるからです。
たとえば、解体費用が社会福祉充実残額の計算では考慮されていません。
また、施設運営を継続しながら建替えるとすれば、仮設費用や移転費用も考慮されていません。
こういった、建替時に発生する費用は、加味されていないため、
社会福祉充実残額を全て使ってしまうと、建替費用はあるが、解体できない、なんてことにもなりかねません。
これらの費用については、当初の厚労省の説明では、計画に織り込めばいいという説明だったと思うのですが、いつのまにか触れられなくなりました。
監査法人アリアでは、会計監査を受嘱している法人に、
見積りが可能であれば、資産除去債務や引当金計上の検討も考慮するように、ご提案しています。
これは、社会福祉法人会計基準に明示的に規定されていませんが、財務諸表利用者の判断を誤らせないための、必要な会計処理だからです。
適正かつ健全な財政状態を表示し、社会福祉充実残額が、より適正に計算されることで、法人にとっての必要財産の社外流出を防ぐためです。
社会福祉法人会計に関しまして、ご不明な点がございましたら、
経験豊富な監査法人アリアへ、何なりとお問い合わせください。