仮想通貨取引業者の監査はじめました。~ICOはどうなるのか~
2017.09.13
仮想通貨とは、円やドルのように国が発行する法定通貨とは異なるものですが、ブロックチェーンという取引記録の保存手段によって通貨と同様の役割を有するもので、その代表例がビットコインです。この仮想通貨は、ネット上における価値の記録に過ぎないものですが、このような記録がなぜ通貨の役割を果たすかについては、銀行預金の送金取引で実際に現金のやりとりをしなくても預金残高の記録が増減するのをイメージするとわかりやすいと思います。
このような仮想通貨取引は年々増加しており、本年から施行された改正資金決済法では、仮想通貨が正式な決済手段として位置づけられることになりました。また同法では、仮想通貨交換業者について登録制とされ、顧客資産との分別管理義務が規定されています。また、仮想通貨交換業者の分別管理状況については、公認会計士又は監査法人による外部監査も義務づけられています。また、本年税制改正によって仮想通貨の取引が消費税について非課税取引とされるとともに、最近では国税庁よりビットコインの決済による利益は所得税においては(事業所得等の各種所得に付随して発生する場合を除いて)雑所得に区分するという見解が示されています。さらに、会計基準については企業会計基準委員会(ASBJ)が「仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する指針」の開発を進めており、本年10-11月に公開草案が公表される予定です。
以上のように、仮想通貨取引が活発となっており、これに関する法制度の整備も進められているところですが、最近、大変注目されているのがICO(Initial Coin Offering)という仮想通貨を用いた企業の資金調達方法です。
ICOとは、自社で仮想通貨(トークン)を発行して、これと交換に資金を調達する方法で、最近中国当局がICOを禁止したことで、さらに有名になりました。また、ICOはホワイトペーパーという事業内容・計画を開示するだけで資金調達が可能で、法規制や監査が不要であることから資金調達の「民主化」としばしば表現されています。
ということは、現行制度における資金調達方法が、暗に規制がキツすぎて非民主的であるというわけですが、戦後、我が国で「証券民主化」を旗印に証券制度や監査制度が生成・発展してきたわけですが、いったいどこでボタンを掛け違えてしまったのでしょうか?